キーマンインタビュー
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積水(大連)住宅技術有限公司
董事 総経理 浦木 英雄 2023年9月号
社員の活力を生かし
レジデンシャル分野に貢献するHideo Uraki
活力あふれる会社を目指す
積水(大連)住宅技術有限公司は積水化学工業の子会社です。積水化学工業は1947年にプラスチックメーカーとしてスタートし、現在はESG経営を経営の基盤に置き、住宅カンパニー、環境ライフラインカンパニー、高機能プラスチックカンパニー、メディカル事業という4つの事業を中心に、環境と社会へ貢献することを企業理念としています。その中で、住宅カンパニ―はセキスイハイムを日本全国で建築、販売をしており、当社はその住宅カンパニーから委託を受け、日本全国の図面等を作成するBPO業務を行っています。
昨年までの世界的なコロナ禍や原材料価格の高騰による未曾有の変化によって、当社も大きな影響を受けました。そのような事業環境の悪化に対して、構造改革の前倒し、高付加価値へのシフト、価格転嫁等で対応して稼ぐ力を蓄えました。その結果、売上高、純利益は過去最高を確保し、現在経営基盤は強化されています。当社が所属する住宅カンパニーは、これから予想される日本の厳しい住宅市場環境の中で、分譲、街づくりや買取再販など、前中期で仕込んだ新たな成長の種を次の3年間で一気に開花させ、コア事業との連携を図りながら、量・質の持続的成長を可能にする事業ポートフォリオの確立を目指しています。一人一人が、当社の強みを生かしてどう成長させていくか、そのためにそれぞれの事業や職場でどう取り組んでいくかを探索し、そして成長を実感できる目標設定と確実な進捗管理により達成感を得ていくことが、「活力溢れる良い会社」へ繋がることをテーマにしています。当社はこの住宅カンパニーの方針に基づき、「社員の活力溢れる」会社として持続的成長ができるよう、時代の流れに即して日々変化を試みながら事業活動を進めています。ちなみに、住宅カンパニー以外の事業はそれぞれ世界でトップシェアを争う技術と製品を持っており、中国国内にも多く進出しています。住宅カンパニーの事業もタイへ進出していますが、BPO業務は中国の当社のみです。
20年間培った信頼の技術力
弊社が2003年から大連でのCAD業務をスタートし20年が経ちました。20年前にスタートした中国での日本のBPO業務を当社でも進めるため、中国国内で拠点をいくつか検討し、様々な要素で大連が最適と判断しスタートしました。20年前、多くの住宅会社が図面のBPO業務を立ち上げました。そのおかげで、現在では大連での日本の図面の作成能力は極めて高く、日本以外では、ここ大連でしか日本の図面の作成はできないのではないかと思います。20年で培われた図面作成能力は、日本では今やそのノウハウがないものもあります。その反面、20年間で上がったコストは、競争力という点ではいずれは危機を迎えるという事でもあり、大連でのBPOは次の時代に向け、新しい展開の必要性に直面しているということでもあると思います。当社の社員は離職率が低く、現在も半数以上がほぼ15年以上勤続しています。そのため、図面作成のノウハウは蓄積されており、精度、スピード共に進化を遂げています。当社は中国国内からの収益業務はないため、日本のコスト上昇に伴い中国でのBPO業務も新たな局面にあると思いますので、日本からの事業受託拡大を目指しています。
私は2021年より大連に赴任し、総経理として、日本との連絡調整、情報取集に基づき会社の方向性等を模索し、日本とのトラブル等があった時は直接窓口となります。また、積水化学中国の中国エリア統括会社が上海にあり、積水化学全体での中国での人事施策、行事等にも関与しています。私が赴任したのは2年半前のコロナ全盛期の時でしたので、やはりコロナに尽きます。
当社の業務が止まると日本での住宅生産が止まってしまうため、昨年9月のロックダウン時は本当に大変でした。セキスイハイムの工法独自のCADを使用していることに加え、日本との専用回線利用のためリモートワークができない分野もあったため、毎日日本とやり取りをし、優先順位付けと納期延長手配に追われながら、何とか3週間を乗り切りました。コロナが解放された12月の感染爆発の時も大変でしたが、9月のロックダウンの経験で、日本側とはあまりやり取りせずに、社内対応で納期を守りました。日本ではとても無理な隔離とロックダウンをあれだけ完璧に行える中国政府の徹底した指導力には驚きで、ただただ感心するとともに疲れました。
「危」を「機」と捉え事業継続を
千年に一度というほどの災害が起きた12年前の東日本大震災の時、私は福島県で責任者をしていました。災害が起きた時は地震の範囲は福島県だけかと思いましたが、携帯のTVで津波を見た時に、その規模の大きさに衝撃を受けたのを覚えています。ご存じのように福島県はそれから、原発災害で最も大きな被害を受けています。災害から一年半はその事後処理に追われ、様々な出来事に遭遇しました。その10年後、世界を揺るがすコロナの中で中国赴任を経験し、災害の中での事業運営について改めて考えさせられました。「危機」という言葉は、「危=危険」と「機=機会」という字が組み合わされてできています。当然のことですが、企業は成長を続けなければ存続しません。「チャンスは苦境の中にある」という言葉通り、リスクを次のステージへの力に変えることは重要だと思います。
日本の住宅業界は少子高齢化の中、今までの事業形態の変革を進めています。その変革に遅れることのないよう、当社も事業範囲を日本の変革に合わせて改革していく必要があると考えています。また、当社の社員は総勢で70名程ですが、従業員の満足度が高く、積水化学グループの全世界数百社の中でトップ3に入っています。その理由を従業員一人一人に聞いたところ、社員同士の仲の良さと、日系企業としての安定性が最も大きな理由でした。この特徴を今後も維持しつつ、更に日々改善を図り、顧客である日本企業への貢献と従業員満足の両立を、更に進化させていくことも重要だと考えています。
社員有志での環境活動。年一回開催し、終了後はバーベキューパーティーで社員と交流しています。コロナで様々なイベントが開けなかった年が続いていたので、外での活動が社員同士の仲の良さと元気を実感できる場所でした。
プロフィール
Hideo Uraki
1964年生まれ、大阪府出身。同志社大学法学部卒。1986年積水化学工業に入社し、神奈川県で10年間営業として勤務。その後10年間営業マネージャ―を担当。2006年~住宅カンパニーで企画部長を務める。2011年~2021年、福島、神奈川、千葉の拠点にて支店長を担当。2021年より現職、董事・総経理として経営責任を担う。
<張さんをさらに知る>
趣味のゴルフ
ゴルフを通じて多くの仲間と出会い、楽しい時間を過ごしながら、私の未知の世界に関する情報収集にも大変役立ちました。ゴルフそのものは全く上達しませんが、今後も仲間との時間を大事にしていきたいと思います。
中国をもっと知りたい
ロックダウンが終わり、やっと中国の大きな国土を出歩けるようになりました。可能な限りいろいろな場所を見て、記憶に残していこうと思って旅行に出ています。上記の写真は先日内モンゴルへ旅行した時のものです。
大連クローバー会
同志社大学を母校にするメンバーの集まりです。赴任当初は頼りにするばかりでしたが、今年度は会長をさせて頂いています。今後も新たに赴任するメンバーのために明るく楽しい集団であり続けたいと思います。
積水(大連)住宅技術有限公司
中山区長江路280号大連中心・裕景5号楼ST大厦36階
℡(0411)8253-9771
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