キーマンインタビュー

- ビジネス記事
- キーマンインタビュー
大連愛斯克産品様本有限公司
総経理 山川一興 氏 2019年8月号
成長と変化の激しい中国で
自信と誇りを持って挑戦を
営業マンの役割を担うサンプルブック
サンプルブックの製作は収録商品の開発と同時進行で企画がスタートするため、修正変更も少なくありません。カーテンの縫製手配、撮影手配に始まり、紙面デザイン、製版、印刷、生地のカット貼り製本など、長いスパンで多くの人の手を借りて出来上がります。加えて製本冊数は、各種数万冊ロット。そういう意味で社内ではサンプルブックのことを「重戦車」とも呼んでいます。サンプル生地については、1冊あたりに使用する生地が多いものでは千点を超え、各生地毎に材質が異なるために裁断方法、貼り方も千差万別です。全自動、半自動、手加工と加工工程も多種多様です。各生地を貼り付ける台紙の仕様や生地の貼り位置も異なるため、ページによって、高品質、低コスト実現のための最適な加工方法もばらばらです。また商品自体が開発中であるが故、材料の供給もスムーズに進まず、その製作工程は大変複雑です。企画から製本まで1年近いスパンをかけて行うものもあり、すべてがオーダーメード、一般的な販促物やカタログとは一線を画します。
サンプルブックの製作は、このような責任の大きさと工程の複雑さから心臓外科医に例えられるほどです。私達は、まさにお客様の「命」を預かる仕事を任されているという使命感を持って、日々の業務に取り組んでいます。
客体に価値基準を置く不患人之不己知,患不知人也
当工場は日本の京都に本社を置く「株式会社さら」の現地法人として1999年に設立、2000年に操業を開始しました。現在は延べ3万3千平方メートルの敷地におよそ450名の従業員を擁し、年間300万冊を越える世界最大のサンプルブック専門工場として、ここ大連で運営を続けています。同社は1986年にサンプルブックの専門会社として創業しました。1998年に委託加工の形で大連に進出した当初、私は短期赴任の予定で大連に滞在しました。当時現地スタッフとコミュニケーションをとる中で、一人ひとりが向上心を持ち、将来のビジョンを熱く語っていることに驚いたものです。そして彼らのパワーと活気に惹かれ、今後も大連で駐在員として働きたいという嘆願書を社長に提出。これを認めていただき、2000年より自社工場設立と同時に着任となりました。以降2004年からは総経理として工場運営全般に携わってきました。
異なる文化や習慣を持つ中国人の現地スタッフを理解し認め合った上で、教育指導を行い、会社の考え方や方針を理解してもらうことは決して簡単なことではありません。例えば、弊社の企業理念でもある「客体に価値基準を置く」。「客体のために」という思いは自己満足であってはならないのです。ただ、これをそのまま訳して教えても現場には伝わりにくい。時には日本式の考え方を植え付けられているといった受身の姿勢にもつながりかねません。そこで私は、孔子の論語の中の一節「不患人之不己知、患不知人也」(人の己を知らざるを患(うれ)えず、人を知らざるを患うるなり)を引用し、現場に伝えてきました。このような現地の文化に根ざした表現により理解がより一層深まるものと確信しています。一方で「高い志・社会貢献」、「日中友好」、「人材育成」も私達企業の理念です。
エスコを利用して成長してもらい、各人の発展に寄与したいという思いは、進出当時より変わりません。これからも血の通った付き合いを通じて、スタッフとの信頼関係を築いていきたいと考えています。
大連を拠点に新たな成果を
弊社は発展著しい中国において、20年前からここ大連に生産拠点を構え、事業を展開してきました。今後はその利点を活かして、新たな挑戦を仕掛けて行きたいと考えています。弊社ではグループの軸であるサンプルブックの企画、制作、製本以外にも、「不動産デベロッパー向けの住宅販売におけるITを活用した各種ソリューションの企画・開発・コンサルティング」、「ヨーロッパから輸入した食器やインテリア雑貨を日本全国の百貨店で販売する貿易事業」、「五行思想で京都らしさをスタイリッシュに演出したホテル-朱雀館の運営」など、多岐にわたり事業を展開しています。各業界で活躍しているグループ内の他の事業部とのコラボレーションにより、中国市場にも挑戦したいと考えています。また弊社のお客様の中でも、中国や東南アジア市場に向けて「ジャパンブランドを世界に」という思いで挑戦されている企業様がおられます。そのような企業様が海外で使用されるサンプルブックについては全面的にサポートさせていただきたいと考えています。
工場設立から今年で20年目になりますが、若くして海外勤務や立ち上げプロジェクトと、最高の環境を与えてくれた会社へ恩返しできるよう、現地の優秀なスタッフと共に、大きな成果の実現へ向けて年中無休で頑張って行きたいと思います。そして私達さらグループが、大和魂を持って中国市場に挑戦していくことで、働き方改革が叫ばれる母国日本に対して何かしらの刺激を与えることができれば、この上ない喜びです。
大連忘年会の席上にて、師と仰ぐ幅田昌伸董事長(中央)と共に。後方には、飛び入りで駆け付けてくれた本社の各事業部を支えるアラフォーの同士達の姿も。離れてはいるけれど、がっちりスクラムを組んで、日中双方から革命を起こしていきたいと思います。
PROFILE
やまかわ かずおき
<山川さんをさらに知る>
リトルリーグでの息子の雄姿
闘志あふれるピッチングで大連のリトルリーグチームを引っ張る息子の海斗。闘志を剥き出し過ぎて、「ピッチャーに不向き」と監督から内野手転向の命を受けました。そんな男気溢れる息子が私の自慢の宝物です。
最愛の妻のワンショット
20年前に中国語を教えてくれていた女の子と、まさか20年間人生を共にすることになるとは思いも寄りませんでした。妻の支えと理解があるからこそ、仕事に励むことができています。心の底からありがとう! 我爱你!
大連愛斯克産品様本有限公司(ESCO)
開発区鉄山中路2号
℡(0411)8731-0155
合わせてチェックしたい!
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- 大連愛斯克産品様本有限公司
- 大連愛斯克産品様本有限公司 董事 山川 一興氏 2025年7月号
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- コニカミノルタ軟件開発(大連)有限公司
- コニカミノルタ軟件開発(大連)有限公司 総経理 中村 勝一氏 2025年6月号
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- 三井物産(中国)有限公司東北分公司
- 三井物産(中国)有限公司東北分公司 東北地区総監・東北分公司総経理 中村 大智郎氏 2025年5月号
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- 星崎商厨智造(蘇州)有限公司
- 星崎商厨智造(蘇州)有限公司 大連R&Dセンター 副責任者 近藤 修雄氏 2025年4月号
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- 利優比建築科技(大連)有限公司
- 利優比建築科技(大連)有限公司 秋山 裕行氏 2025年3月号
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- 高新天龍製鋸(大連)有限公司
- 高新天龍製鋸(大連)有限公司 副総経理 竹中 哲也氏 2025年1/2月号