キーマンインタビュー

新華日本食品有限公司
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新華日本食品有限公司

董事総経理 蔡 紹霞氏

日本各地の海産物を香港へ「良いもの」を紹介し香港での消費拡大に貢献

海産物輸入業を通じ、香港での日本産水産物の消費拡大に貢献してきた新華集団の日本食品部門である同社。董事総経理の蔡紹霞氏に話を伺った。


漁師から事業を興した父

 新華日本食品有限公司の母体である新華集団は、1957年に海産物の加工・卸業としてマカオで創業しました。半世紀を経た現在、香港・マカオに8拠点、中国本土に11拠点、ベトナムやカナダなど海外9拠点を置き、日本や世界からの水産物を中心とした食品の輸入、「西村日本料理」など飲食店・小売販売店の経営、また不動産、金融、建築など、多角的に経営を行っています。
 事業を興したのは父の代です。それまで中国の小さな漁村で漁師をしていました。エビを売る商売から始め、1950年代に会社を設立してマカオ・香港へ進出。70年代には日本へも輸出を行うようになりました。この頃には、ベトナム、カンボジアなど東南アジアで買い付けたクルマエビなどの海産物を輸出するようになっていました。品質管理に細心の注意を払い、出荷商品は日本で再び精査、検品した上で販売するという手法が日本の各商社からの信頼を得て、徐々に三井・三菱はじめとする日系商社や銀行などとの関係を構築していきました。
 一時期は米国やカナダ、オーストラリアまで輸出先を広げていましたが、80年代に入り、再び香港市場へ注力する方向へ舵を切りました。それまで卸業メインだった経営方針も切り替え、香港を拠点に小売や飲食店経営事業を進めていきました。

日本市場との関係構築に奔走
 
 私は大学を卒業した1979年から、家業に加わりました。当時はまだまだ「ファミリー・ビジネス」の段階。管理部門に入り、人事や経理など長く父の経営補佐をしていました。やがて企業が成長し、人材も育って内部経営が安定してきたところで、取引業務の部門に移りました。
 今でも覚えていますが、2003年に福岡から海産物を買い付けたのが私にとって初めての貿易経験でした。航空輸送で12
kgの生魚を運んだのです。父には、たった12
kgを運んでもしょうがないだろうとあきれられました。その言葉で心に火がつき、それから毎週のように福岡へ。現地の業者たちと対話を重ねながら、市場視察、取引条件の交渉、梱包の方法を調べたり輸送ルートを探したりと奔走しました。とは言え、私は日本語が分からず、福岡の取引先は広東語が分からない。紙に文章を書き、それを見せ合いながら何時間もやり取りをしました。そうして地道に関係を築いていきました。
 2007年に始めた広島の牡蠣の輸入は弊社が先駆けでした。香港の中華料理店へ紹介すると、「調理が難しい」という声がシェフたちから多く、不評。彼らを連れて広島へ赴き、現地の生産者に調理法のコツなどを教えてもらったりもしました。数年間は試行錯誤しましたが、成果が実り、現在では香港の飲食業界に広く普及しています。この広島の牡蠣をはじめ、日本の水産物や食材の香港への輸入拡大に対する貢献を認めていただいたとのことで、2015年には日本の農林水産省から表彰を受けました。
 福岡での取引を確立した後は、日本最大の魚河岸である東京・築地、その次は北海道、沖縄、そして大阪と開拓を進めました。現在は日本の5地域から海産物を輸入しています。複数の輸入ルートを確保することで、台風や地震などの天災でも新鮮な海産物を遅延なく香港の取引先へ届けられるよう努めています。 

日本の海産物をもっと香港へ
 
 昨年6月、黄埔に日本の海産物や食品を主に扱う複合施設「九号水産」をオープンしました。5万平方メートルの敷地内に、日本各地の鮮魚をはじめとする食品・食材を販売するスーパーや、魚介類が生きたまま買える生簀、その生魚を調理もしてくれる飲食店や自分で料理できるレンタルキッチンなどを備えています。これまでの仕事を通じて、日本全国のまだ有名ではない土地や小さな街を多く訪れ、そこで東京や大阪など大都市では出会えなかった美味しいものを数多く知りました。そういった無名の「良いもの」を、ぜひ香港の人にもっと知ってもらいたいと思っています。しかも、ただ商品として売るのではなく、個々の背景にあるストーリーまで消費者に伝えたい。そのために、販売店では店頭に並べた商品の隣にスクリーンを設置して紹介VTRを流したり、POPで説明を添えたりという工夫をしています。価格競争に陥らないよう、なるべく他店に流通していないものを紹介するということもこだわっています。

 父は10年前に他界しました。現在、新華集団は弟が会長として引き継いでいますが、私は特に、この会社、そして父の原点であった海産物の事業を継承していきたいと考えています。かつて「海産大王」とも呼ばれた父は、今でも私のアイドルなのです。実際には、この「九号水産」は新華の全体規模からすればとても小さいプロジェクトです。それでも、私は父の夢、父が目指していたものを引き継ぎ、海産物の普及を通して、これからも日本と香港の関係発展に貢献していきたいと思っています。


今年8月には、HKTDC主催の「Food Expo」のため来港した齋藤健農林水産大臣が「九号水産」を訪問。店頭に並んだ日本全国からの商品を視察し、その品揃えの豊富さと幅広さに感嘆した。

PROFILE

メイ チョイ


香港大学を卒業後、1979年から新華集団に参画する。社長である父・蔡繼有氏の補佐として、人事、経理などの管理業務に携わる。2003年より、海産物取引部門で日本からの買い付けを担当。2005年、新華日本食品有限公司の董事総経理に就任。2017年、黄埔に日本の海産物を主に扱う「九号水産」をオープン。

<メイさんを知るキーワード>

「負けず嫌い」の努力と継続


仕事をする中で大事にしてきたのは、とにかく「がんばる」。壁にぶつかっても、そこで諦めずに努力し続けることです。もともと負けず嫌いで、納得するまでとことんやるタイプ。そうやって日本での取引も少しずつ切り開いてこれたのだと思います。

自然の中で感じること

あるとき、北海道の広い空と果てしない草原の風景を見て、ストレスがすっと消えていくのを感じて以来、自然に触れるのが好きになりました。自然の前では人間は小さな存在。自分の力ではコントロールできないことがある、としみじみ感じます。

海外の食べ歩きで情報収集

海外出張では、必ずその土地で人気の店に食事に行きます。そこで今何が流行っているのかを知りたい。先日は北海道で人気ピザ店に行きました。地産食材を使ったピザ。香港でも日本の魚介や野菜を使った和風ピザを、とアイデアが膨らみます。




新華日本食品有限公司

住所 Sun Wah Centre, 215 - 239 Wu Shan Rd, Tuen Mun, NT
電話 852-2404-3988

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