中国の法律

『会社法』の改正は、企業に大きな影響を及ぼすことになる。会計と税務処理は、企業の対外報告書と開示の基礎である。本文では、『会社法』改正後に企業に生じるおそれのある税務リスクを検討する。

一、有限責任会社の出資払込期限が「5年内」に改正

1、借入利息の損金算入
資本金が満額で払い込まれていない企業は、損金算入できない借入利息の金額を正確に計算する必要がある。出資者が引き受けた資額を期限内に満額で払い込まない場合、対外借入の利息は出資者の引受額と払込額の差額につき支払うべき利息に相当し、企業の合理的支出に該当しないため、課税所得額の計算時にこれを損金算入できなくなる。
2、減資に伴う税務リスク
新会社法発布後、資本金を満額で払い込むだけの資産がなければ、株主は減資について検討するであろう。ただし、減資によって一定の税務リスクに直面する。
①同比率減資の場合、株主がいかなる代金も受け取らず、持分譲渡に係る収入がなければ、課税はなされない。ただし、追加的収入があれば、所得税が課せられ、且つ配当所得になるか持分譲渡所得になるかについて企業の純資産に基づいた判断が必要になる。
②非同比率減資は間接的な持分譲渡に相当する。この場合、対価が支払われず、且つ企業の純資産がプラスであるときは、納税調整が行われることになる。
3、連帯責任による損金算入の税務リスク
有限責任会社の設立時、出資者が定款どおりに出資額を払い込まない場合または実際に出資した非貨幣財産の実際価値が引き受けた出資額を著しく下回った場合、設立時におけるその他の出資者は、出資不足の範囲内で当該出資者と連帯責任を負う。この時に負う連帯責任により実際に支出した金額は、「収入の取得と関係する合理的支出」に適合せず、企業所得税計算時に損金とすることができない。

二、持分と債権の出資方式の明確化

新会社法では、持分と債権の出資方式が明確化されており、なかでも租税にかかわる問題には特に注意が必要である。個人株主と法人株主はいずれも、その保有持分を新たに設立する会社の名義に移して出資とみなす場合、持分譲渡所得に基づき所得税を納付する必要がある。
債権譲渡は、持分譲渡と同じく非貨幣性資産に属し、法により所得税が課せられる。なお、非貨幣性資産の投資には相応の税制優遇があることに留意すべきであろう。

三、株主権利買戻請求権の濫用

持分支配株主が権力を濫用して会社又はその他の株主の利益を損なった場合、その他の株主は、合理的な価格でその持分を買い戻すよう会社に請求する権利を有する。

四、資本準備金による損失補填

新会社法では、剰余積立金と任意積立金で損失を補填しきれない場合、資本準備金で損失補填できる。同法は、次の2点において企業所得税の処理に影響に及ぼす。
その一、資本準備金で損失補填した場合、企業全体の税負担が重くなる。
その二、資本準備金で損失補填すること自体に課税の可能性がある。これについては、次の2つの見解がある。
①資本準備金による補填は、実質的に企業の資本構造内の変動であり、企業には実質的に所得がないため、法人所得税を課すべきではない。
②企業が資本準備金を使用して損失補填することは、株主が企業から投資回収を得た後に企業に再投入することに相当し、企業は所得を認識して企業所得税を納付しなければならない。

五、株主が出資額の払込みを期限徒過した場合における利息の課税性に係る問題

出資者が取決めどおりに出資額を払い込まない場合には、満額で払込済みの出資者に対し違約責任を負う必要がある。かかる違約責任と賠償は、いずれも一種の遅延利息で、会社の取得する利息に属するが、その本質は企業の経営行為ではないから、正常に経営して取得する違約金及び賠償金の性質とは根本的な違いがある。つまり、出資者による会社への投入とみなして資本準備金に計上することができ、課税性はない。
この度の新会社法の大幅な改正は、企業の税務と税務のコンプライアンスに対して実質的な影響を及ぼすものである。企業は、企業の状況と現行の税務・税務法規の合理性・適法性を踏まえて、会計処理と税務の手配を行わなければならない。