キーマンインタビュー
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百利達(上海)商貿有限公司
董事・総経理 浅水 宰 氏
独自のシステム開発で
「大健康」時代に切込む
独自の技術力でさまざまな健康機器を製造し、今や世界にその名を轟かす「TANITA」。高齢化社会へと変化しつつあり、健康意識が高まるこの中国ではローカルメーカーとの勝負も熾烈を極める。中国全体の指揮をとる同社の中国現地法人「百利達(上海)商貿有限公司」の董事・総経理である浅水氏に話を伺った。
世界の健康をリードする「TANITA」
私たち「TANITA」は1923年に創業して以来、『「健康をはかる」から「健康をつくる」へ』を合い言葉に、皆様の健康をトータルサポートしつづけています。1959年に日本で初めて家庭用体重計を製造、販売を行ったことを皮切りに、1992年に乗るだけで計測できる体組成計(体脂肪計)を製造、販売しました。従来は1人の測定に2時間かかっていた体脂肪の測定をわずかな時間で測定可能にした画期的な商品です。また、1994年には世界初となる家庭用体脂肪計付ヘルスメーターを販売したことで、弊社のブランドイメージを一層高め、おかげさまで現在では体重計や体組成計といえば「TANITA」を思い浮かべていただけるようになりました。
海外進出は1988年よりスタートし、アメリカ、オランダ、イギリス、ドイツ、香港などに拠点を持っています。1990年に広東省東莞市にて工場が完成し、2006年には、ここ上海にて「百利達(上海)商貿有限公司」を設立しました。この工場は全世界の家庭用ハカリを製造するマザー工場と位置づけており、ここから世界中へと輸出しています。また、弊社は工場の販売部門として誕生しましたが、現在では中国大陸全土をカバーする本社直結の現地法人として発展し、体重計、体組成計、キッチンスケール、タイマー、温湿度計などの商品を製造、販売しています。ハカリを販売するという観点からは、中国はローカル企業や他国企業がひしめき合う厳しい市場でありつつ、生産拠点としても販売先としても、やはり重要な市場です。私たちは、キッチンスケールのような家庭用品から医療用体組成計までをフルラインで品揃えしており、健康意識の高まる中国のニーズに対して、チャネル別に取り組んでいきたいと考えています。
鍵を握るのは現地での深く強い関係づくり
中国において体組成計は、医療用の「人体成分分析儀」と家庭用の「体脂肪計」に分けられます。前者は医療用のため、医療器2類の認証が必要で、制度や安全性を担保しなければならず、部品などの変更も容易にはできません。後者は近年規制の緩和で設けられたカテゴリーで、比較的自由度の高い商品設計ができます。こうした制度の変更をキャッチアップしながら、医療器カテゴリーにおいて認証取得しながら新商品を出していくためには、現地の専門家や法律家との連携は欠かせません。また、家庭用商品に関しては、ローカルメーカーとのスピード勝負をしつつ、中国人が好むデザインのアプリ設計を行っています。ここでも単独で乗り越えるというよりは、現地のことをよく知る代理店との密接な情報交換と協力関係が重要だと考えています。家庭用商品はECサイトでの販売をメインとしていますが、医療用の場合は各省各都市の代理店が病院と密着していることもあり、医療系の代理店を通じてでなければ商品を取り扱ってもらうのは簡単ではありません。そのため代理店に対しては訪問するのはもちろんのこと、商品への理解を深めてもらうために勉強会を開催するなど、各セールスや総経理との良い関係を構築するためのコミュニケーションを積極的に取っていく必要があります。
「大健康」を進める中国タニタだから成せる商品
皆さんは「大健康」という言葉をご存知でしょうか? 国民の健康促進を図る中国の方針のひとつで、病院医療を中核とし、健康食品、サプリ、健康診断などのほか、病後リハビリ、老人ホームなど、生老病死に関わるすべての領域を対象とした幅広い概念のことです。こうした方針が示されるようになったのは、病院数が少なく受診するにも長い待ち時間を要すること、医療費の高騰や中国が高齢化社会へと突入したことなどが理由に挙げられると思います。加えて、昨年のロックダウンで多くの人が健康の大切さを実感するなど、社会の変化や歴史的な出来事によって中国全体の健康意識が向上し、私たちが製造、販売する「人体成分分析儀」の需要は高まっています。
今や体組成計は単純に測って終わりではなく、生体データとして蓄積し、推移を捉えることが重要です。家庭用商品はアプリと連携するものが主流となっていますが、弊社では業務用体組成計においても、スマートフォン上でデータ閲覧ができる仕組みを開発しました。業務用なので施設管理者もデータを管理することができ、主にフィットネスジムで採用されています。身体の変化をアプリなどを介してデータ化することで、本来目には見えない健康を可視化し、健康への意識を高め、継続する原動力となります。また医療機関向けソフトでは、単純に測定だけではなく、測定結果や測定者の持病リスクを踏まえて、レシピ紹介などの栄養処方や、おすすめのストレッチを紹介する運動処方を出せるものを開発しました。今後の中国ではこういったシステムやサービスの需要はさらに高まると予想しています。
総合健康企業を見据え新たなソリューションに意欲
先述したデバイス、システムを基に、将来的には「タニタ食堂」のような、食のソリューションを提供したいと考えています。総合健康企業として、中国においても、健康寿命を延ばすことに貢献していきたいです。
私の横にあるマシンは「MC-980」という弊社の最上位機種です。中国では主に省立病院の健康診断科で使われております
PROFILE
プロフィールTsukasa Asamizu
1975年生まれ、千葉県出身。早稲田大学第一文学部卒。2014年にタニタへ入社し、日本国内の営業部で日用品カテゴリーの課長として大手流通をメインに担当。2018年に上海へ赴任し、2020年総経理に就任、現在に至る。
ゴルフに本格的に取り組んだのは最近なので、コースに出るよりも、練習場で打っている方が楽しいですが、ボールが芯に当たって飛ぶと気持ちがいいです。
在上海日本国領事館でRIZAPさんと共催で健康セミナーを開催。健康意識の高い方に体組成測定や、タニタ食堂メニューを基にした健康な食事について説明しました。質問も多く頂き、上海人の健康意識の高さを感じることができました。