キーマンインタビュー
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日通国際物流(中国)有限公司
董事長 杉山 龍雄 氏
培った経験と信頼を糧に
2022年大いなる変革を
日本通運株式会社の中国法人であり、中国進出40周年を迎えた「中国日通」こと「日通国際物流(中国)有限公司」。日通グループは2022年にホールディングス体制への移行、新グループブランド導入を控えている。ホールディングス会社の専務執行役員に就任予定で、東アジア地域総括と中国日通董事長を兼務する杉山氏に話を伺った。
1937年に創設された日本通運は、陸海空運輸送、倉庫保管、引越・移転など、物流に関する業務全般を担い、物流を通じて社会の発展に貢献できるよう努めて参りました。日本を中心に、米州や欧州、東アジア、南アジア、オセアニアの5極体制を展開。現在では48カ国309都市に732拠点を有し、グローバルネットワークを駆使したロジスティクスサービスを提供しています。
中国大陸では、現在は現地法人24社、43都市に174拠点を構え、4,000名以上の従業員がいます。私自身は1982年の入社間もない時から縁あって中国関係の業務に携わっており、これまでに北京と上海、台湾に駐在。上海は今回で3回目の駐在になり、上海での通算駐在年数は今年で18年となりました。この間、幸運にも中国改革開放の急速な発展に立ち会い、各経済特区の開発建設に参与し、保税区から自由貿易区に至る時代の移り変わりを体験しました。また、西安や重慶などを出発し欧州へ伸びる貨物列車「中欧班列」の定期運行と、「一帯一路」構想に伴う共同成長を実現し、中国が世界最大の貨物貿易経済体へと遂げることに微力ながら貢献し続けて参りました。こうした功績が実り、2020年に上海市政府より白玉蘭記念賞を受賞したことや、西安市政府より西安市名誉市民の称号を授与頂いたことは、この上なく喜ばしいことでした。
2022年、大きな変革
日通グループは、1981年の北京事務所設立を出発点に、おかげさまで今年中国進出40周年を迎えました。1980年~90年代、日系製造メーカーの中国進出時には輸出入業務を中心とし、日系自動車メーカーの本格参入時には自動車部品輸送が業務の柱となりました。その後は日系顧客偏重からの脱却の機会となった「China Global」と呼ばれる中国民営企業関連の事業を拡大し、新型コロナウイルス蔓延時には代替ルートの開拓や複数の輸送モードを組み合わせたさまざまな物流BCPソリューションをいち早く開発するなど、中国の経済状況や環境の変化を迅速に捉え、しかるべき戦略を立てて事業を継続してきたことで、この記念すべき節目を迎えることができました。日通グループの海外売上のうち、今や中国での売上はその3分の1程度を占めています。さらに、全世界に拠点展開していることから、中国の「走出去政策」に基づく中国企業の海外での事業活動に対するお手伝いができる点も当社の強みです。日通グループにとって中国は非常に大きく重要なマーケットだと認識しており、今後益々の成長が期待されています。
そして来る2022年。日本通運は大きな変革を遂げます。まず、経営計画で定めた長期ビジョン「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」の実現のため、グループ経営を強化するとともに、グローバルガバナンス体制を高度化するべく、1月4日にホールディングス制へ移行し、「NIPPON EXPRESS ホールディングス株式会社」が設立されます。グループ経営機能を日本国内事業会社から明確に分離することで、日本起点のグローバル事業の更なる成長を促すとともに、成長領域である海外事業に経営資源の更なる配分を進め、海外起点のビジネスの拡大を目指します。
次に、ブランド力強化の一環として、グループ統一のブランドアイデンティティを同日から新導入します。日本通運のアルファベット表記であり、新たなホールディングス社名でもあるNIPPON EXPRESSの短縮形、「NX」をグループブランドとし、グローバルかつグループ各社共通でブランディングを展開してまいります。今後は、現在の通称「日通」から、「NX」ブランドとして、末永く皆様に親しんで頂けるよう、事業を通じて浸透を図って参ります。
私儀ですが、この度の体制変更に伴い1月4日からはホールディングス会社の専務執行役員に就任いたします。引き続き東アジア地域総括および中国法人の董事長も兼務いたしますので、変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、衷心よりお願い申し上げます。
物流を通じて中国に貢献したい
現在、日通グループとしては医薬品、半導体、自動車、電機電子、アパレルを重点5産業と位置付けており、特に注力しているのは医薬品関連の輸送業務です。新型コロナウイルスをきっかけに、医薬品供給のBCP対応やドライバー不足への対応を含め、医薬品物流の全体最適を実現する医薬品サプライネットワークの構築を目指しています。今年3月には、上海浦東空港CFSにおいて、中国における日系企業として、初めてGDP認証(Good Distribution Practice=医薬品の適正流通基準)を取得しました。昨年立ち上げた医薬品事業開発センターでは、現地スタッフが指揮をとり、東アジア地域における品質管理システムの構築とGDP拠点の拡大などに取り組んでいます。中国へ進出して40年来、物流を通じた社会貢献、貿易・経済交流、文化交流、人材育成などを積極的に推進して参りました。近年では植樹活動や、学校との産学提携および奨学金授与などを実施しましたが、これからも地域に根差した社会貢献活動を継続的に行いたいです。今後は「NXグループ」として心新たに、中国の物流改革に少しでもお役にたてるよう引き続き尽力します。さらに来年は日中国交正常化50周年という重要な節目を迎えますので、関連するイベントなどには積極的に参加したいと考えております。物流を通じて日中友好に貢献したい、それが私の一番の願いです。
PROFILE
プロフィール
Tatsuo Sugiyama
1959年生まれ、東京都出身。拓殖大学外国語学部中国語学科卒業後、1982年日本通運に入社。1993年に北京駐在、1994年に上海駐在事務所長代理として初めての上海勤務を経験。2004年から6年間、中国室次長として2度目の上海勤務。2010年台湾日通総経理を経て、2014年に執行役員兼東アジア地域総括および中国日通董事長に就任。2018年には常務執行役員兼東アジア地域総括および中国日通董事長に就任し、現在に至る。
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