キーマンインタビュー

月桂冠(上海)商貿有限公司
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月桂冠(上海)商貿有限公司

総経理 村上 浩一氏


面目に粛々と、が肝要
着実なファン作りを続け、
日本酒ブームを見据える


創業1637年。長い歴史の中で、日本酒の魅力を海外にも発信し続けてきた月桂冠。今、日本酒が知名度を高め始めた中国で、いかにファンを増やすか。村上総経理に伺った。



一世紀以上に亘る中国との関わり


 京都・伏見の地に創業し、約380年という長い歴史を持つ月桂冠ですが、実は外国との関わりもとても古いです。遡ること明治時代、1901年にアメリカ・ハワイに初めて清酒を輸出したことをきっかけに海外展開がスタート。その5年後の06年にはカリフォルニアへも輸出を始めており、早い段階から米国市場に打って出たことで、現在でも、アメリカでの清酒シェアは高い数字をキープしています。
 中国との関わりは1912年、大連の卸店に向け清酒を出荷したことから幕が開けましたので、思えば100年以上の歴史があることになりますね。そして33年には、志ある社員がたった一人で瀋陽に乗り込み、中国市場の開拓を本格始動。5年後には出張所から支店に昇格するまでに至りましたが、やはり単身での奮闘には苦労も多かった様子で、私もその当時を記録した社史を読み返しては、約70年前に異国で尽力した大先輩の姿を自身に重ね、感慨にふけることもあるくらいです。その後、40年には中国での現地生産も開始したのですが、折りしも第二次世界大戦の真っ只中。戦況の悪化により、残念ながら海外での展開は一時ストップとなりました。いわば、月桂冠としては、志半ばで中国を後にしたことになります。終戦を経て、早くも49年にはハワイへ清酒の輸出を再開。これを機に、米国各地やヨーロッパなど、徐々に海外との関わりを正常に戻していきました。その後、80年代にはアメリカで社会現象とも言える日本食ブームが巻き起こるなど商機を得て、海外における知名度も一気に増していきましたが、中華圏での展開は台湾や香港がメインとなっており、長い間、中国本土へ返り咲くことはありませんでした。


“3度目の挑戦”で現地法人設立


 中国本土との長い沈黙が破られたのは2001年頃。深センの販売代理店を通じて、中国国内へ清酒の輸出を再びスタートした頃から動き始めました。06年には北京と上海の代理店とも契約を結び、販売経路を少しずつ拡大。さらに、07年には上海に駐在事務所を開設。ただ、事務所と言えども、実際は卸店内にテーブルを置かせてもらっただけの簡素なものでした。
 大きな転機となったのは、11年の現地法人の設立です。これは言わば、戦前から続く中国展開の歴史において“三度目の正直”。自社で販売会社を設立することで販路を大きく切り拓く狙いで、それに先駆け、現地にある日本独資の酒造会社への委託製造も開始。日本から技術陣を派遣し、ハイクオリティーな“中国産の清酒”の製造を実現しました。自分たちの手で清酒を作り販売するという、最も月桂冠らしいスタイルが、ここでやっと整ったと言えるでしょう。
 現地法人を上海に設立した理由として、まずは委託先の生産拠点(江蘇省丹陽)に近いこと。そして上海が、他と比べて特殊な国際都市であることが挙げられます。酒造業界の判断材料として「ワインの需要が伸びる国は、それを追う形で、日本酒需要も高まる可能性が高い」という仮説があるのですが、まさにそれの都市版。中国ではまだまだ白酒が好んで飲まれるエリアも多い中で、ワイン人気が急激に高まりつつある上海は、まさに食が多様化する過程にある状態。だからこそ、舌の肥えた上海の皆様をターゲットに、日本酒が勝負できるチャンスも大いにあると感じています。


未来のブームを仕掛けるために


 現在中国では、日本産の輸入清酒を13種、さらに現地製造の中国産清酒を2種扱っています。お陰様で売り上げは、年増20%を持続していますが、元来のベースが小さいので、いまだ“ブーム”とは呼べない状況。量販店に商品を並べてもらう活動ももちろん大切ですが、量販店での展開は、言わば“広告”に近いもの。そこから市場が広がり、利益が生まれるという明快な構図ではありません。今後は、現地の飲食店との取り組みを強化し、外食産業へアピールする必要があると思っています。そのために、私自身を含め、弊社社員が様々な飲食店を積極的に訪れること。この一見シンプルなアクションを重ねることで、飲食業を深く掘ることができるでしょう。また、販売促進と同等に重きを置いているのが、中国における日本酒のファン作り。上海市内の飲食店で、利き酒とおつまみをセットにして提供する「月桂冠ナイト」を開催するなど、すでに仕掛けをスタートしています。
 まずは、多くの人に、ありのままの日本酒のおいしさを知ってもらうこと。中国は日本と同じ米文化圏ですし、また、日本酒もルーツを辿ると中国に行き着きます。台湾や香港での実績を考えれば、中国本土でのブームも充分に想定範囲内。重要なのは、やり続ける気持ちを持続すること。時間はかかるかもしれませんが、いつか花開く時のため、真面目に粛々と、中国の飲食事情に着実にアプローチしていきます。




現在米国では第2位、韓国や台湾地区ではトップレベルのシェアを誇るという月桂冠。「甘みがあり香り高い日本酒は、中国の方々にも気に入ってもらえる味わい。まずは日本酒に触れてもらえる機会を増やしたい」と語る


PROFILE


月桂冠(上海)商貿有限公司 総経理

村上 浩一氏

 1968年京都府生まれ。立命館大学文学部(英米文学専攻)卒業後、91年に月桂冠株式会社入社。福岡支社ほかにて、販売促進から、免税店への営業、アメリカ・カナダ向けの輸出入、航空会社へのケータリングなど様々な業務を経験した後、2011年にアジア地域のエリアマネジャーとして貿易部に配属。13年に総経理として上海へ。中国における日本酒ブームを仕掛けるため、昼夜を問わず奔走する


商品デザインの変更がカギ!


 中国にて販売中の、日本産純米大吟醸。以前は焼酎を彷彿とさせるパッケージデザインだったが、村上さんのアイデアで風格あるパッケージに変えたところ、売り上げアップ。清酒を贈り物にするケースも多く「見栄えの大切さを痛感したエピソード」と話す


歴史を感じる街歩きに夢中


 歴史が好きな村上さん。上海には歴史的建築物が多いので、街散策をしながら気になる景色を写真を収めるのが楽しみ。昨年オフィスを移転した際も「旧き良き上海が感じられる場所がいい」とリクエストしたとか


歌って踊れる意外な顔も!?


 実は趣味(特技?)はカラオケ。玉置浩二のものまねから美空ひばり、マイケル・ジャクソン、最近ならジェイ・チョウの中国語曲まで幅広いレパートリーを揃える。時にはダンスも取り入れつつ歌い上げるその姿は、すでに月桂冠名物になりつつあるという噂も


月桂冠(上海)商贸有限公司

愚園路1258号緑地商務大厦1208室
6072-3937(日本語可)
info@gekkeikan.cn
www.gekkeikan.co.jp


詳細は

月桂冠

月桂冠(上海)商貿有限公司

住所 上海市长宁区愚園路1258号緑地商務大厦1208室
電話 021-6072-3937

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