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相続⑩ 世界の所得格差
フランスの経済学者のトマ・ピケティ氏の執筆した著書が話題となりました。トマ・ピケティ氏は、所得格差が無慈悲にも拡大しているというメッセージを発信しました。
所得格差過去最大
OECD(経済協力開発機構)は、日本・米国・ヨーロッパ諸国などを含めた34ヵ国の加盟国の所得格差について調査しました。その結果、富裕層と貧困層との格差が過去最大レベルになったと発表しました。OECDの報告書によると、人口の上位10%の富裕層と下位10%の貧困層の所得格差を比べてみるとOECDデータ平均で約9.6倍にまで広がっていると発表しました。所得格差は、1980年代にはOECDデータ平均で7倍でしたが、2000年代入り9倍に拡大しています。加盟国の中で最も所得格差が大きかったのは、メキシコで30.5倍、次に米国で18.8倍、イスラエル14.9倍と続いています。日本は、2011年以降のデータが公表されていないため比較することができません。一方、格差が一番小さかったのはデンマークで5.2倍でした。
格差拡大原因
OECDの報告書によると格差拡大の原因として、非正規雇用が増加したことを挙げており、1995年から2013年の間の新規雇用の半分は非正規雇用が占めているとの分析をしています。また、女性の所得が男性に比べて15%程度少ないことも所得格差拡大の要因になっていると分析しています。そして、報告書では、世界的に富の分配が上手く機能していないことを指摘しています。この問題に対して、報告書では富裕層と多国籍企業に相応の税負担を負わせることが必要であるとして、タックスヘイブンへの対策に取り組んでいくことを強調しています。
日本の空き家
世界的に所得格差が拡大しているなかで、日本では少子高齢化の影響で空き家率が上昇しています。これは、少子高齢化に伴う人口減少問題が顕在化しているにもかかわらず新築物件がなお供給され続ける「供給過多」の傾向があることと日本の税制上の問題があるためだと考えられます。総務省の調査によると全国の住宅に占める空き家の割合は、13.5%で約820万戸となり8軒に1軒が空き家という割合になります。
空き家対策措置法が施行
日本では、全国で増加する危険な空き家に対する「空き家対策特別措置法」(特措法)が施行されました。特措法は、崩壊や倒壊の可能性があること、ごみが放置されていて衛生上問題があること、周辺の生活環境保全のためには放置が不適切であることの条件を満たす空き家を「特定空き家等」と定義し、各市区町村は、この空き家に立入調査を行い、所有者に対して指導や勧告、命令をできるようになりました。指導・勧告・命令を無視して空き家を放置し続けた場合、行政執行による解体も可能になり、命令に違反すれば50万円以下の過料、立入調査を拒否すれば20万円以下の過料を課すことも可能となっています。なお、平成27年の税制改正では、地方自治体が認定した「特定空き家」については、固定資産税の優遇措置の対象から除外する内容となっています。
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