キーマンインタビュー
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日本大使館
駐中華人民共和国日本国特命全権大使 木寺昌人氏
多くの方との交流を通じ
ただ元に戻すのではなく
新たな関係を築いていきたい
一昨年末の着任から1年を経た木寺大使。2013年の印象深いトピックスを振り返りつつ、あらたな1年をどう迎えるか、今後の抱負を交えて語ってもらった
着任1年を終えた今、思うこと
2012年12月25日に北京に大使として着任してから1年がたちました。着任する前から、私の任務は日中の友好関係を深めることだと考えていました。
日中間では、政治面での関係は依然として厳しく、また在留邦人の皆さまも2012年9月の厳しい状況の思い出がなかなか消え去っていないかもしれません。ですが、中国のさまざまな方とお会いしている中で、2013年の秋からは、中国側からも経済、文化の交流や青少年交流は積極的に進めようといったメッセージが出始めており、こうした動きを歓迎しています。
私の大使としての重要な任務は在留邦人の皆さまの安全安心を確保することです。2013年にはデモなどが起こらなかったことに胸をなでおろしています。国交正常化から40年余りを経て、日中関係は諸先輩の努力によって大変幅広く深いものになっており、簡単に壊れるものではないと確信しています。今後も日中の友好関係を推し進めることに邁進して参ります。
中国各地で多くの人に出会えた1年
2013年、私は北京市のほか、天津市、海南省、甘粛省、陝西省、上海市、重慶市、広東省、大連市、蘇州市などを訪問し、各地の発展状況を見たり、日本語を学ぶ中国人学生と交流したり、また、日中関係の最前線で働いておられる在留邦人の方々にお会いしました。
中国各地で日本企業の工場も見学させていただいたのですが、それぞれの企業が地域に溶け込み、さまざまな苦労をされながら、地域経済の発展に多大な貢献をしておられることを目の当たりにし、そのご苦労に敬意を表したいと思いました。現在、中国全土で約2万3000社の日本企業が活動し、計1000万人を超える雇用を生み出していると言われています。こうした日本企業の努力をこの目で確認することができたことは、とてもよかったと思っています。
また、大連市、広州市、蘇州市では、日本人学校を訪問しました。私は教育者ではありませんが、日本人学校の子どもたちには、「いつまでも日本人学校のお友達を大切にしてほしい」、「日本人であることを誇りに思ってほしい」、「大きな夢を持ってほしい」と伝えました。大変元気の良い子どもたちから、私自身元気をもらいました。各地で学ぶとても元気な子どもたちに出会えたことも、2013年の思い出深い出来事のひとつです。
大連では、大連生まれで大連育ちの母の女学校の同級生にお会いし、母からの手紙を届けることができ、大変良い思い出になりました。その方は御高齢ですが、今でもしっかりした日本語で「私は1943年卒業です」とおっしゃっていました。中国の方とのつながり、ご縁はとてもうれしいことだと思っています。
何はともあれ、我々の仕事は、人と会って相手の考えを理解し、こちらの考え方を伝えることに尽きるので、中国の企業家や学者、俳優など、いろんな方に大使公邸に来ていただき交流しています。
それ以外にも、私はどこに行っても裏通りや市場を歩いて、その土地の人々の暮らしを観察して、人々が何に喜び何に悲しむのかを知ることがライフワークです。これは、さまざまな赴任地でも行ってきた習慣ですが、中国の人々はやはりパワフルな印象ですね。そしてお年寄りに大変優しい。私の母が北京にきて車椅子で万里の長城を見物したときも、皆さんが力を貸してくれ、大変感激した思い出があります。
新たな日中友好関係を目指して
私は北京に着任して1年を迎えましたが、2014年には今の状況から出口を見つけて新たな日中関係が開けるよう全力を尽くしたいと思っております。
日中国交正常化から41年で、日中関係は本当に幅広く深くなっています。さまざまな分野で日中の架け橋になる仕事をされている方がおられます。そこで我々も日中関係をただ元に戻すということではなく、新しい次元の協力関係を築いていきたいと思っております。そのためにコンシェルジュ読者の皆さまをはじめ日中関係の第一線におられる在留邦人の皆さまとともに、一緒に努力して行きたいと思っております。
大使館では、年明けの日中合同成人式などをはじめ文化イベントを積極的に行っています。まだ大掛かりな文化行事はなかなか実施できないのですが、地道にイベントを用意していきますので、読者の皆さんも中国人のお友達を誘って、ぜひ参加していただければと思います。
詳しいイベントスケジュールに関しては下記にある大使館のホームページか、中国版ツイッター「微博」で情報発信しておりますのでぜひご覧ください。私も、大使としてというよりも北京に住む住人としてさまざまなイベントにも興味があり積極的に参加していますので、お会いした際にはお気軽にお声掛けください。
きてら まさと
1952年生まれ。東京都出身。東京大学法学部を卒業後、1976年、外務省に入省。アジア局中国課首席事務官、アフリカ審議官、国際協力局長、官房長などを歴任。2012年9月、内閣官房副長官補に就任。2012年11月26日、駐中華人民共和国日本国特命全権大使に就任。12月25日着任。趣味は散歩とゴルフ。
日本大使館北京市朝陽区亮馬橋東街1号
(010)8531-9800
www.cn.emb-japan.go.jp/
微博 weibo.com/japanembassy
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