キーマンインタビュー

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伊藤喜(中国)投資控股有限公司
董事長・総経理 筒井 質 氏 2024年11月号
誰もが心地よく働ける
オフィス環境を提供する
日本のオフィス家具メーカーの一角を担い、家具の製造と販売だけではなく空間デザイン、さらにはDXによるオフィス運用整備にも注力している「株式会社イトーキ」。創立当初からアジア地域に目を向けており、ここ中国も重要な拠点と位置付けている。そんな中国で舵を取る「伊藤喜(中国)投資控股有限公司」董事長・総経理の筒井氏に話を伺った。

創業者の「開拓精神」が生んだ
1890年創業の大手家具メーカー「ITOKI」
「ITOKI」の歴史は古く、近代日本経済の父であり、新1万円札の顔にもなっている渋沢栄一氏の支援を受けた伊藤喜十郎氏が「伊藤喜商店」を創業しました。伊藤喜十郎氏は開拓精神に溢れ、世界の発明品を日本全国に広めて日本の生活を豊かで快適なものにしたいという想いから、当初は世界の発明品を日本へ輸入し、販売しました。万年筆や魔法瓶、レジスター、金庫もさることながら、ステイプラーという英語名の製品に、発明者のホチキスさんの名前を冠して販売した「ホチキス」は、彼のセンスが光る逸話として今も語り継がれています。
大阪で創業後、初めて支店を出したのは福岡・博多でした。東京に出さなかったのは、広い視野を持つ伊藤喜十郎氏がその当時から中国・アジアの市場を意識していたからでしょう。その意志を継ぐように、1984年にシンガポールへ最初の海外進出を果たし、これを皮切りとして中国に2003年の蘇州市・太倉市にスチール加工工場を作りました。つづけて上海市、深圳市、北京市、さらにアジア地域ではインドネシアやタイに販売拠点を設けました。
また、時代の変化に対応すべく海外事業の方針を見直し、2017年にはシンガポールで大手内装工事会社を、2018年には中国で現地企業のチェア製造メーカーとオフィス家具メーカーを買収し、現地市場への浸透を図っております。日本ではオフィス家具製造会社の「ITOKI」として事業展開し、中国では「NOVO Workstyle」というブランド名で展開しており、顧客の90%が現地企業です。そのため、中国に進出している日系企業様からは「ITOKIさん、中国にあったの?」と驚かれることも度々あります。
中国市場をOFFICE 2.0以上の領域へ
方針転換を経て中国市場への浸透を図り、先述した現地企業2社を買収しましたが、2020年から新型コロナの影響で事業環境は大きく変わりました。
日本本社では、独自の事業領域として「OFFICE 1.0、2.0、3.0」を定義しています。OFFICE 1.0はプロダクトベースの商品販売事業、OFFICE 2.0は空間ベースの商品ソリューション提供事業、そしてOFFICE 3.0は働き方ベースのオフィスDX事業とし、それぞれ「家具」「空間」「DX」がキーワードになっています。日本はOFFICE 2.0から3.0までの領域へ進んでいます。その結果、日本では新型コロナの影響でオフィス環境の見直しが進み、オフィス環境を整えることを投資と考える企業も増えたことで、OFFICE 2.0から3.0までのサービスが提供でき、2023年度は最高益を更新しました。
また、日本本社は2018年に東京オフィスを東京・日本橋にある「ITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)」へ移転・集約しました。働き方の自己裁量を最大化し、ワーカー自らが働き方を自律的にデザインしていくワークスタイル戦略で、それぞれの活動で生産性と創造性を最大にする空間機能をもったデザインです。また、今年11月には本社オフィスが一部リニューアル完了予定です。ショールームを兼ねているので、見学大歓迎です。現在の働き方に課題を感じている方にお越しいただき、課題を解決するヒントとなればと考えております。
一方、現在の中国オフィス家具メーカーはOFFICE 1.0の領域が中心のようです。我々は、オフィス家具を生産して、販売するという事業モデルをそのように定義しております。オフィスの設計は、室内設計の専門会社に依頼することが多く、働きやすく、生産性を高めるという観点で設計された空間よりも、斬新で、格好良いという方が好まれるようです。もちろん、先進的な働き方を実践されている企業もあります。我々は1975年からオフィス設計を自社で行っており、オフィスを知り尽くした企業であるが故に提供できるOFFICE 2.0以上の領域のサービスを提供する必要があります。
今後、中国市場は日本の後追いの傾向が強いと考えています。日本の成功モデルを展開しながら、OFFICE 3.0のサービスでは日本よりも進んだIoT技術と連携して各企業に適したより働きやすく、快適で生産性の高いオフィスを提供していきたいです。
上海駐在の経験を糧に
中国事業の総責任者としてできること
私自身の営業経験は20年、国際事業は13年のキャリア、また上海駐在は通算6年になりました。
国内外で培ったさまざまな経験をもとに、従業員とのコミュニケーションをさらに深め、業務上の日本のやり方における利点と中国の利点を取って仕事を進めてもらえるように注意を払っています。現地の経営管理は現地の方が行う方針の下、私は会社のカンフル剤的存在でありたいです。
私が入社した頃に日本のバブル経済が崩壊し、その後はいわゆる失われた30年でした。そして私たちは経済的に厳しい時期に、世の中を良くしようともがいてきた世代です。今、中国も同じような状況になっているという声も耳にしますが、これからの中国も成長を続ける時代が過ぎ、成熟社会になっていくと思います。
1990年代の日本では「変わらなきゃも変わらなきゃ」がキャッチフレーズのコマーシャルが放送され、流行語にもなるなど「変化」を求められた時代でした。私は時代に則したビジネスのやり方を考え実行しつつ、自らの立場をしんがりと捉え、後継者の育成、従業員の業務面のレベルアップを日本本社と連携し実現しながら、大きな市場でのプレゼンスを発揮できる企業になりたいと考えます。

1回目の上海駐在は2013年から16年まで、2回目の今回は2021年からです。従業員のなかで唯一の日本人ですが、社員に恵まれた良い環境で仕事をさせていただいています

東京・日本橋のオフィスです。フリーアドレス制を採用しており、二人作業、情報整理、電話・WEB会議、リチャージなど、それぞれの活動に応じて作業空間を選べます
PROFILE
プロフィールTadashi Tsutsui
1968年生まれ、兵庫県姫路市出身。関西外国語大学を卒業し、株式会社イトーキに入社。東京で大手法人企業、2011年に国際本部にて現地法人管理を担当したのち、2013年に伊藤喜商貿(上海)有限公司へ出向し1回目の上海駐在を経験。2021年に伊藤喜(中国)投資控股有限公司への出向。現在は董事長・総経理を務める。


本社社長が来海時の1枚です。コロナが明けて、初めての本社社長の訪問となり、社員一同、大変喜んでくれました。従業員のモチベーションが上がる話をしていただき、私自身も組織のリーダーのあり方を学ぶことができる良い機会でした。

「中国にいる間にしかできないことをやってみたい!」と考え、中国内の旅行や上海市内の散策、食事は中国各地の料理を積極的にいただくようにしています。おかげで、沢山の知り合いができ、上海生活もだいぶ馴染んできたと思っています。




