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北京市安理律師事務所

中国の法律

北京市安理律師事務所

中国の商標をめぐる現状と企業の対応戦略

中国の商標現状に踏まえ、かかる商標手続きを利用し、
相手方の悪意行為を掘り起こし、商標権の取得と保護を図る。

中国における年間の商標出願件数は、2015年の288万件から2021年には919万件となっており毎年顕著に増加している。2020年では912万件であったところ、アメリカでは64万件、日本では18万件となっており、中国の出願件数は格段に多い。このように膨大な出願件数ではあるが、一部については確かに実際の使用目的に基づき、また防御の目的で出願されている一方で、冒認出願をしたり譲渡利益を得るために出願したりするケースが多いのもまた事実である。後者の出願については、中国知的財産権局が厳しく取り締まる旨を何度も表明しており、2022年3月29日にも『商標の悪意による登録行為を引き続き厳しく取り締まることに関する通知』が発布されている。企業と代理人にとっては、相手方の悪意ある行為をいかに掘り起こして利用するかが非常に重要な作業になる。
また、出願登録件数が高くなれば先行商標の基数も大きくなるので、新規出願の商標が拒絶される可能性も高くなる。拒絶割合は2015年から2020年にかけて、およそ17%〜50%となっている。新たに出願する商標の登録を得るために実行可能性が比較的高い方法として、先行する引用商標に対して異議、無効または三年不使用取消を申し立てることがある。かかる申立件数は年々増加し、商標審査案件数は2015年の10.9万件から2020年には35.8万件に増加し、これに対応する商標権利付与・権利確認に係る行政訴訟事件も7,632件から14,977件に増加している。このうち三年不使用取消案件について、当職らの近年の成功率は基本的に50%以上に達しており、新たな出願登録を得ようとする企業にとって三年不使用取消の手続は実行可能な対策の一つであるといえよう。
商標権利付与・権利確認に係る行政訴訟事件では、その類型に応じて、企業と代理人の対応するポイントも異なる。まず、拒絶査定不服審判に係る行政訴訟事件について、2020年の国家知的財産権局の敗訴率は27.3%であったが、情勢変更事由を除く敗訴率は4.7%にすぎない。つまり、三年不使用取消、異議申立て、無効審判などを利用せずに商標が近似しないまたは商品が類似しない旨を主張するだけで商標登録を得ることは難しいということである。よって、多く場合、拒絶査定不服審判に係る行政訴訟は、訴訟手続によって時間を稼ぎ、三年不使用取消などの手続結果を待つことに利用される。
次に、異議申立ての不服審判及び無効審判に関する訴訟事件は実体法に偏重している。『商標法』第30条を例とすると、主に商標の近似または商品の類似という観点から主張が行われる。ここで考慮すべきは、引用商標の知名度の高さと係争商標出願者の悪意の大きさが商標の近似と商品の類似に係る判定に大きな影響を及ぼすという点である。三年不使用取消の不服審判に関する行政訴訟において主に重要なのは提出の使用証拠が十分かどうかであるが、当職らの経験によれば、当事者の悪意の有無が使用証拠の採用に一定の影響を及ぼしている。
商標権侵害訴訟事件については、2016年以前は商標権利者の商標登録に悪意があったか否かにかかわらず、同一または類似商品上の同一若しくは近似商標を確かに構成する場合、商標権利者の提起した権利侵害訴訟では基本的に権利侵害行為を構成する旨の判定が下されており、賠償額の面で配慮されるだけであった。しかしながら、2016年、当職らの取り扱ったケースと中国最高法院が判決した別のケースとで、ほぼ同時に権利侵害行為を構成しない旨の判定が下された。したがって、冒認者が提起した権利侵害訴訟については、具体的な状況に応じて反撃できるようになったといえる。また、悪意ある権利侵害行為については、ここ数年、中国の法院の命じる賠償額が明らかに高くなっており、賠償額1,000万元以上の事件が2019年から2021年まで毎年5件を超えている。したがって、企業はその経営において可能な限り権利侵害を回避すべきであり、また権利が侵害された場合には訴訟によって相応の賠償を得ることもできる。