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北京市安理律師事務所

中国の法律

北京市安理律師事務所

病気休暇の管理に頻発する問題に関する分析

本文では、病気休暇と医療期間の管理の実情からはじめ、日常管理に
おける使用者の誤解を掘り起こし、頻発している問題について
分析と解答を行い、正しい病気休暇の管理を行うための一助とする。

病気休暇と医療期間は同じ概念なのか？

　使用者か従業員かを問わず、「病気休暇」と「医療期間」の概念は混同されていることが多い。従業員は病気で休暇を申請する際にはいつも「病気休暇」の呼称を用いるし、使用者のほうでも承認過程で医療期間の概念を濫用しがちである。概念を混同すると理解に齟齬を生みやすく、ひいては労働紛争を生じうる。事実、病気休暇と医療期間は異なる2つの概念である。労働に関する法律の枠組みのもとでは、「病気休暇」とは、従業員が病気に罹り又は業務外で負傷して仕事を休む必要があるため、使用者が与える一定期間の休暇をいい、その期間については通常、医師が病状に基づき建議し、使用者が承認する。一方、「医療期間」とは、従業員が病気に罹り又は業務外で負傷している間の、使用者がこれを理由に労働契約を変更又は解除してはならない期間をいい、その期間の計算は法律によって定められている。したがって、「医療期間」は従業員が「病気休暇」を取得していることが前提の、法で定められた一種の保護期間である。「医療期間」満了後も従業員がなお傷病を理由に休み続けた場合、この時点で使用者は当該従業員に別の業務を手配する権利を有し、当該従業員が別に手配された業務にも従事できないときは、法定手続を履行した上で労働関係を解除できる。

従業員は体調不良を理由に病気休暇を取得できるか？

　ほとんどの従業員は「体調が悪ければ病気休暇届を提出して病気休暇を取得できる」と考えているが、これは誤りである。『傷病による長期休暇中従業員に対する企業の管理業務を強化することに関する通知』では、従業員が傷病により休暇を必要とする場合には、医療機関又は指定病院の発行する疾病診断証明を証憑とし、かつ企業の承認を受けなければならない旨が定められている。今は指定病院での受診を求められることはなくなっているが、従業員は、医療機関の発行する診断書と休暇証明は依然として提出しなければならない。さらに使用者の要求する病気休暇承認手順に従って病気休暇申請を提出する必要があり、使用者の承認を得なければならない。従業員が上記の手順を踏まないまま取得した休暇は病気休暇にはならず、使用者が認めれば私事休暇扱いにすることができるけれども、使用者は私事休暇中の従業員に賃金を支給する義務はない。

使用者は病気休暇を承認しないことができるか？指定病院での受診または再診を要求できるか？

　ほとんどの使用者は病気休暇の承認制度とその手順を定めている。使用者によっては申請手順に瑕疵があれば承認しない旨を定めているが、これにはリスクがある。司法実践では、従業員がすでに病気休暇を申請し、かつ医療機関の発行する診断書及び病気休暇証明を提出している場合、裁判官は使用者が相応の病気休暇を認めるべき旨を判示する傾向にある。
　また、指定病院で受診すべき旨を定めている使用者がある。しかしながら、この方法の有効性には争いがある。大多数の裁判官は、かかる規定は従業員の正常な受診の権利を制限する疑いがあるとして支持しない傾向にある。指定病院での再診を求めるものもあるが、これについても大きな争いがあり、支持されない可能性が高い。ただし、使用者の要求に合理性があり（例えば、使用者の指定する病院のほうが高い医療水準を有する場合）、かつ使用者が再診費用の立替を約束するならば、支持される可能性もある。

病気休暇期間の賃金はどのように支給されるのか？

　病気休暇期間の賃金支給については、使用者が自ら決定することになっているが、地方ごとに支給基準が定められている。『労働部による、「中華人民共和国労働法」の徹底執行に係る若干の問題に関する意見』では、最低賃金基準の80%を下回ってはならない旨が定められている。深圳では、通常勤務時の60％以上、かつ最低賃金の80%以上を支払わなければならない旨が定められている。上海はさらに特殊で、従業員の勤務年数に基づき段階を分けて計算する。したがって、使用者は、従業員に病気休暇期間の賃金を支払う場合には、労働契約履行地の病気休暇賃金の最低基準を下回らないようにしなければならない。