キーマンインタビュー
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福至(大連)養老服務有限公司
総経理 尹訓正 氏 2019年5月号
日本式介護の現地化と
総合的な事業展開を目標に
地域密着型の介護施設として
私たちの施設は、開発区の馬橋子街道にあります(「街道」は区の下に置かれる行政区分)。馬橋子街道はもともと開発区の政治経済、文化商業の中心として、国内の様々な土地から異なる年齢層の人々が移住してきた歴史がありました。2016年の統計によれば、同街道に住む60歳以上の老年人口は1・52万人で全体の7・8%を占めるほか、直近3年では増加率が9・33%と、大連平均の5・8%や全国平均の3%と比べても突出しており、同地区において高齢化は軽視できない問題でした。その後、国が推し進める「90+7+3」養老服務体系基本計画(90%を在宅介護、7%を社区介護、3%を施設介護とするモデル)に基づき、2016年より他地域の高齢者介護サービスモデルの詳細な調査を開始。最終的には、30年以上の実績と経験を持つ日本のエフビー介護サービス株式会社が、高齢者介護施設の運営方として採用されることになりました。同社は、福至(大連)養老服務有限公司(以下福至養老)を大連に設立。社名の福至は、中国の慣用句「福至万家」(多くの人に福を与えるという意味)が由来です。一方で私たちは地域密着型のサービスを展開するために、馬橋子街道との緊密な連携により、2016年11月に華潤社区養老服務総合示範中心項目(華潤社区の高齢者介護サービスにおける模範的な中心プロジェクト)を共同で立ち上げました。これは高品質のサービスや専門的な技術設備と能力、医療と介護の統合モデル、小規模多機能の理念によって、高齢者に対して社会経済の発展水準に合った、かつニーズを満足する高齢者介護サービスを提供することを目的に発足したものです。私は現在福至養老の総経理として、施設の管理や同プロジェクトの運営を担当しているほか、中国老年学和老年医学学会の看護ケア分会における常務委員会委員も勤めています。
公益と運営効率の最大化モデル「センター+社区+ボランティア」
私たちが運営するプロジェクトの拠点は開発区華潤5期潤海園61-2号にあり、もともと社区の総合サービス用の建物として計画されたものです(「社区」は街道の下に置かれる区分)。この建物の1階には華潤社区の居民委員会事務所や診療所が置かれています(「居民委員会」は日本の町内会にあたる組織)。そして2階、3階には私たち福至養老が運営する高齢者介護サービスセンター「福至養老」があります。同施設は2018年1月に開業し、10月に正式に1人目の入所者を迎え入れました。2019年4月現在では、臨託サービスと介護サービス計25名、老年食堂食事サービス60名の利用者がいます。なお臨託とは、扶養高齢者を一時的にセンターに迎え入れお世話をする形態で、介護サービスとは、病気や重病の初期患者となった高齢者に対して専門的な世話をするサービスです。
同プロジェクトは「センター+社区+ボランティア」モデルを標榜しています。施設の管理者や専門スタッフ、協力者や提携先など地域の関係者、そしてボランティアが、サービス上の役割分担を徹底し、それぞれの職能を充分に発揮してもらうことで、同プロジェクトの社会公益と運営効率の最大化を共同で推し進めます。これにより従来の伝統的な社区において、専門性の不足やサービス内容が乏しいといった諸々の問題を解決することができると確信しています。また施設の設計には、先進的な日本のグループホームやユニバーサルデザインの理念を取り入れ、高品質のエコ建材や、怪我や転倒防止のための緩衝材を使用した内装を施しているほか、日本から輸入した各種介護設備や消費財を設置。これにより、従来の伝統的な高齢者介護施設との差別化を図っています。一方で、運営チームスタッフの平均年齢は29歳と若く、薬剤師や看護師、心理コンサルタント、日本や中国の介護資格を持つスタッフが在籍しています。高齢者介護を専門に学んだ留学経験者や、業界で十数年の経験を持つスタッフなど、精鋭揃いです。
現在福至養老で提供しているサービスは、デイケアおよびデイタイム休憩室利用、リハビリ活動、臨託と介護サービス、そして高齢者向け給食サービスがあります。このほか、周辺の社区高齢者にも開放している老年大学課程なども実施しています。
日本式介護のメリットを活かし現地で総合的な介護事業の展開を
2018年福祉養老の開業をもって、当初の目的であった、介護施設の運営チャンスおよびプロジェクトを探すという任務はひとつの区切りを迎えました。そして現在は次の段階、施設運営の安定化とプロジェクトの成功を目標に邁進していきます。
今後は総合的な事業としての介護サービス展開を図るべく、3つの柱を掲げています。一つ目はコンサルティングです。競合他社をただ競争相手としてみなすだけでなく、日本式介護サービスをいかにローカル化し、中国で運用していくかを一緒に考えていきたい。二つ目は施設運営の黒字化です。成功事例を作っていかなければなりません。そして三つ目は人材育成です。今後は本社との人材交流や、技能実習生の制度の利用も検討しています。私たちはこれからも介護サービスへの認知度向上に向け、多方面からアプローチを続けていきます。
2016年5月、上海国際康 復養老博覧会(CHINA AID)に出展し、「日本式 介護サービスの現地化応 用」をテーマにプレゼン を行いました。
2017年8月、中国の提携先関係者を引率し、長野県の特別養護老人ホーム、「佐久平 愛の郷」を訪れ、介護現場の最前線を見学。双方の提携合意を取り付けました。日本の介護が中国に根付くことを期待しています。
PROFILE
いん くんせい
1989年大連市出身。大連外国語大学で日本語を専攻。3年次より長野大学に2年間交換留学し、環境ツーリズムを学ぶ。卒業後は日本にとどまり、地元のエフビー介護サービス株式会社に入社。本格的に介護を学ぶ。同社の中国進出に伴い、2017年に福至(大連)養老服務有限公司の総経理に就任。趣味はスポーツ、音楽。
<尹さんをさらに知る>
大学時代の写真を公開
若い頃から音楽が大好きで、大学時代は仲間とロックバンドを組んで活動していました。当時はギターとボーカルを担当。こちらは演奏中の貴重な一枚。
利用者の家族より送られた錦旗
錦旗(ジンチー)は、中国で感謝や表彰の際に贈られる旗。福至養老を利用する認知症の母の家族より、同施設の心を尽くしたケアに感謝の気持ちを込めて錦旗が贈られました。
福至(大連)養老服務有限公司
開発区華潤5期潤海園61-2号
℡(0411)3921-2157
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