キーマンインタビュー

上海伊藤忠商事有限公司/伊藤忠商事株式会社
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上海伊藤忠商事有限公司/伊藤忠商事株式会社

  • エリア:上海

董事総経理/執行役員 東アジア総代表補佐 水谷 秀文氏



中国の消費者のために
不退転の覚悟で臨んできた
中国でのビジネス展開


1972年から中国との本格的な貿易を開始。総合商社として初めて中国から友好商社に指定されるなど、歴史的にも中国ビジネスを重視してきた同社の真意とは。



トレードと事業投資の2本柱

 

 総合商社とは自らモノを作り、自らが小売をするのではなく、メーカーやリテール業界の皆様と一緒にパートナシップを組んで、さまざまなサービスを側面から提供し、消費者の皆様に満足いただく商品やサービスを生み出すお手伝いをするコンシェルジュのような存在だと思います。

 伊藤忠には現在繊維、機械、金属、エネルギー・化学品、食料、住生活、情報金融と7つのカンパニーがあります。各カンパニーがカバーする業界により、中国とのお付き合いは仕入先であったり売り先であったり加工地であったりと業態はさまざまですが、現在特に注力しているのは、マーケットのために何ができるかを考えることです。言い換えれば、消費力向上が目覚ましいこの国の消費者の為に、安全で安心できる良質のモノやサービスを提供するということになります。

 トレードにおいては歴史的に繊維や化学品、紙製品などの生活資材関連商品に強みがあります。繊維は伊藤忠の祖業であり、約160年の歴史の中で原料からテキスタイルやアパレル製品のトレードへ、ブランドビジネスからブランドそのものや運営会社のM&Aへとビジネスモデルを進化させ、日本から中国や世界市場へとビジネス領域を広げています。生活用品、食品、衣類など消費者に直結する分野のビジネスを一層強化することが、当社の得意技であり強みだと思っています。日本企業の中でも第一陣として1972年に中国に進出した伊藤忠ですが、今は中国市場を世界で最も重要なマーケットとして位置づけ経営資源を投入しています。トレードは、今までも今後も当社にとって重要な事業ですが、それだけでは次世代ビジネスには対応できません。トレードに事業投資を加えた2本柱が当社の成長エンジンです。投資銀行のように投資をしてIPOで回収というモデルではなく、当社はお金だけではなく人材や情報などあらゆる経営資源を投入した上で経営にも関与させていただきます。そしてともに企業価値を向上させ、その分を配当やビジネスで還元して頂き、更なる好循環に繋げていくというビジネスモデルが事業投資です。例えば、製造業であればモノ作りのプロの方々のお役に立つ材料調達や販売網や物流のお手伝いを行い、研究開発により専念頂ける環境を整えることで、お互い効率的な役割分担ができ、一緒に勝利に向かって確度を上げていくことができます。まさに、ゴルフのプロとキャディーのような関係と言えるかもしれません。キャディーはプロの体調やクセ、得意技を熟知し、コースに事前に乗り込みコースとプロの相性を分析し、他のプロの調子も調べ上げ確実な勝利のためにさまざまなサポートをすることで、選手をより際立たせます。より賞金(利益)が稼げる、ギャラリー(消費者)の多いトーナメント(マーケット)にプロを案内し、ベストな体調でプレイをしていただくようにするのがプロキャディ(商社)の役割だと思っています。


中国中信集団公司との提携について


 2015年に、約6000億円を出資し中国中信集団公司(CITIC Group)と戦略的業務・資本提携をしました。2014年の日本からの中国への投資総額が5400億円程度だったのに対し、この投資はその額を上回った巨額の対中投資ということで、日中間でのさまざまな意見がありました。メディアやステークホルダーからも励ましのお言葉や、厳しい貴重なご意見もいただきました。この提携の実現には、改革開放後に中国が第一号で認可した外資企業であるタイの正大集団(CPグループ)とのご縁が欠かせませんでした。中国での事業展開を強化するにあたり、アジアを代表するCPグループと、中央企業の代表格で金融+αで中国の改革開放の重責を担うCITICと提携し巨額の資金を投じたことは、如何に我々が中国市場を重視しているかという明確な意思表示だと思っています。世界中のプレーヤーが集結した中国市場で勝つには更なる武器と工夫が必要になります。強力な人脈や情報ネットワークを整備し、日本企業の強みを加えてチームを組んでさまざまな案件を進めていければと思っています。


中国の消費者のために


 今後は環境保護、省エネ、医療、教育、スポーツ、レジャーなどの分野に注力していきますが、私たちが常に意識していることは、これらの事業を通じて如何に消費者に喜んでいただくか、消費者が喜んで自分たちのお金を使ってくれるかいうことです。そのために品質、価格、需要の有無、さらには10年後の中国の消費者が何を喜ぶだろうかということを真剣に考えてまいります。時代とともに変わる中国の消費者のニーズに応え、消費者が喜んで手に取ってくれるモノやサービスの提供に関与できている限り、中国はリスクではなくチャンスのある市場だと信じています。





大学生だった1983年に短期留学で初めて中国の地に足を踏み入れました。中国でのビジネスがしたくて当社に入社し、それから現在まで約33年半の月日が経ちますが、そのうち17年半を中国で過ごしています。


PROFILE


伊藤忠商事株式会社

執行役員 東アジア総代表補佐

上海伊藤忠商事有限公司

董事総経理

水谷 秀文氏 


大阪外国語大学中国語学科卒、85年伊藤忠商事株式会社に入社し繊維製品貿易部に配属。86年に海外研修生として北京大学に留学、93年上海事務所、03年伊藤忠繊維(上海)有限公司駐在を経て、14年には中国繊維グループ長兼伊藤忠繊維貿易(中国)董事長、15年からは東アジア総代表補佐(華東担当)兼上海伊藤忠有限公司総経理に就任、16年に上海伊藤忠商事南京分公司総経理を兼任し現在に至る。



水谷さんを知るキーワード

人生初のホールインワン


ゴルフが趣味でよくプレイしていますが、一昨年北京でのコンペに参加した時に人生で初めてホールインワンを決めました。賞品として茅台ゴルフ酒をいただき、喜びもひとしおでした。


中国語人材1000名突破



2018年4月、中国語を話せる社員の数が1000名を超え、盛大な記念大会が開催されました。社員の4人に1人が中国を話す会社です。今後は世界各地に派遣され、世界レベルで中国ビジネスに挑戦します。


中国国際輸入博覧会への出展



昨年11月に開催された輸入博に出展し、環境に配慮した伊藤忠グループのさまざまなプロジェクトや技術を紹介。中国の人々の生活のお手伝いをする総合商社として大いにアピールできました。



上海伊藤忠商事有限公司

浦東新区世紀大道88号金茂大厦4階 
021-2021-2016

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