キーマンインタビュー

東電化(中国)投資有限公司
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東電化(中国)投資有限公司

  • エリア:延安西路

中國本社 総裁 浅沼 俊英氏

重要拠点である中国での
開発、製造、販売を推進
中国発のビジネス展開に注力


磁性技術を活かして社会のイノベーションを支えてきた同社。売上の大部分を占める重要拠点であるアジア地区の総裁として辣腕を振るう同氏にお話を伺った。


創業80年以上の電子部品メーカー

当社のもともとの社名は東京電気化学工業といいまして、1930年に東京工業大学の教授がフェライト(磁性材料)という材質を発明し、企業化したのが始まりです。後にマグネットやコンデンサーなどの部品の製造を開始し、1970年代にはオーディオテープやビデオテープが主力商品となりました。その後はハードディスクに使用しているヘッドという部品が世界シェアナンバー1となり、それが事業を牽引した時代もあります。当社が製造しているものは年代によって異なりますが、現在の代表的な製品としてリチウムイオン電池、各種コンデンサー、コイル、HDD用ヘッド、センサーなどが挙げられます。

当社の製品で皆さんに馴染みのあるものは少ないと思いますが、中でも携帯電話用のリチウムイオン電池は世界シェアが非常に高いです。月に約1億個を製造しており、アメリカの超大手企業を含め、当社の電池を使用していない携帯電話メーカーはないと思います。ほかには、三大重要部品のうちの二つであるコイルとコンデンサーも主力商品です。これらは日系企業が非常に強い分野で、電化製品の中身のほとんどは日系企業が作ったものです。例えばセラミックコンデンサーという部品は、高級機種の携帯電話は1台当たり800〜1000個。高級EV車は約1万8千個もの数量を使用します。当社はこの部品を年間で約200億個製造しています。
1968年に台湾に進出して以来、2000年以降は中国での製品開発も始めました。当社の屋台骨であるリチウムイオン電池は、開発も製造も全て中国で行っており、中国以外の地域に工場はありません。今期のグループ全体での売上見込み額は1兆4千億円で、そのうち約70%がアジア地区(うち中国60%)を占めています。また、全従業員の約80%がアジア地区(うち中国75%)を占めており、中国は製造拠点としても、ビジネス拠点としても重要な地域になっています。


ガバナンス体制の強化

中国ビジネスのリスクの一つとして、法令や省、市レベルでの方針が頻繁に変更になり、それが新規投資や増産、工場の新設・増設、人の採用、税務政策、日本人出向者などの多くの経営マターに影響を与えることが挙げられます。また、これら法令や方針の解釈も政府の担当者によって変わることも少なくありません。そのためにも、ローカルのマネージャーを中心に、信用し任せることで人間関係をしっかりと確立しておくことが大切です。本社役員の三分の一は外国人で、うち一人は中国人ですし、電池事業やハードディスク事業にしてもトップは中国人です。例えば都市計画が発表され、当社の工場がある場所が将来的に住宅地として指定されてしまったとしても、一つの工場で数千人を雇用していて、かつ政府の担当者と信頼関係を築けていれば簡単に立ち退きを迫られはしないものです。

また、特に日本の本社との関係では事細かに起こったことを伝えるのではなく、ポイントのみを整理して伝えることが実務的には重要です。例えば人事制度は本来、昇級昇格に相応しい人を選抜するにあたって、初めにあるレベルに達した人を全員選抜し、1年間の研修を実施した上で合格者を選びます。しかし中国で実施する際は、メンツを重んじるという中国人のメンタリティを十分に考慮しながら、選抜の基準を更に厳密に行い、選抜者のモチベーションが下がらないような研修制度にしています。本社の方針も地域にあったようにアジャストしていくことが大切です。若い中国人の社員を海外へ出向させるなど、人材育成にも注力しています。


モノ作りからコト作りへ

近々では米中貿易戦争や、中国経済の不振などがあるものの、中長期では「中国製造2015」、「一帯一路」という2大政府方針のもとで、政治的な問題は抱えながらも、経済は継続的に拡大していきます。今後はJV(ジョイントベンチャー)やM&Aも視野に入れながら、ローカルR&Dも更に強化し、中国発のユニークなビジネスを増やしていきます。特に「IoT」、「エネルギー(創エネ、畜エネ、省エネ)」の分野に注目していきます。
また、今までメーカーではモノ作りがメインでしたが、最近当社ではコト作りへとシフトしつつあります。新しいシステムや仕組みをお客様へ提案していくべく様々な取り組みをしています。例えば当社が製造した磁気のパッドを使うことで、エックス線を使うことなく身体の中を見ることができます。他には、当社の創業の地である秋田県にて、特殊なセンサーを用いてお米を作る際の温度、湿度、日照時間などを管理して、最適な刈り時を算出しています。酒蔵に依頼してそのお米でお酒を造っていて、うまくいけば1、2年後にはお酒の販売にも挑戦してみたいと考えています。


2016年から東電化(上海)国際貿易有限公司(受動部品販売法人)の総経理を務め、2018年より現職に就任。中国にある38社の子会社のガバナンスや、シェアードサービスなどの事業を展開しています。


PROFILE

ASANUMA TOSHIHIDE

1958年8月23日北海道出身。明治大学商学部卒業後、1982年TDK株式会社入社電子材料営業事業部。1990年TDK Corporation of America。2002年TDK株式会社 電子部品営業本部 企画部兼宣伝企画部 部長。2005年TDK株式会社 経営企画部 部長。2014年TDK株式会社 電子部品営業本部 営業企画統括部 統括部長。2016年TDK株式会社電子部品営業本部 中国営業統括部 統括部長。2018年よりTDK株式会社 中国本社 総裁。


<浅沼さんを知るキーワード>
ラクビー


高校3年間とTDKに入社してから6年間ラグビーをしていました。TDKでは最高で関東社会人リーグ2部まで進出しました(1シーズンのみ)。写真はTDKでプレーしていた時のものです。


親父バンド

日本にいた際に、息子が通っている中学校での学園祭をきっかけに「親父バンド」を結成し、年に2回はライブハウスで披露していました。私は主にボーカルを務めていました。


ミュンヘン駐在


経営企画部に所属していた際に、買収したドイツ・ミュンヘンの企業に約5年半駐在しました。写真はその際に現地の同僚と「オクトーバーフェスト(ビール祭り)」に行った時のものです。

東電化(中国)投資有限公司

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電話 6196-2310