キーマンインタビュー

上海髙島屋百貨有限公司
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上海髙島屋百貨有限公司

  • エリア:虹橋

董事長 小森 智明氏

街とともに発展しながら
日本の優れた商品を中心に
生活を快適にする提案を

2012年12月に開業し、今年で5周年を迎えた上海髙島屋。開業間もなく赴任し、成長を見守り続けてきた同社の董事長に、経営に対する思いと今後の展望を伺った。

街作りのリーダーとして

 髙島屋グループは海外において、上海、シンガポール、ホーチミン、バンコクのアジア4都市で展開しています。今年はシンガポール髙島屋が25周年、上海髙島屋が5周年を迎えました。中国・ASEANでの事業展開は、アジア圏での人・モノ・情報がより交流してくるであろうことを踏まえ、その活発化・拡大を想定して店舗進出を図ってきたものです。併せて、日本における中国人やベトナム人などの採用も早い段階から行ってきました。以前はニューヨークやヨーロッパ地域にも店舗がありましたが、今では中国・ASEANに収斂しています。上海店はまさに中国進出の橋頭堡として開店し、今後の中国展開や日本におけるインバウンド顧客の対策の上でも、経済消費をはじめとする変化を読み取る上で重要な拠点となっています。
髙島屋グループは街作りをテーマに、百貨店+ショッピングモールの多機能商業施設を運営しています。上海ではショッピングモールを併設展開してはいませんが、特徴化を図るべく日本本社に上海駐在経験者である上海店担当バイヤーを2名配置し、日本商品・日本ブランドの直輸入と自営販売を拡大しています。このビジネススキームはASEAN各店にも展開を企図しています。また立地産業である百貨店としては、街・地域の一員でありその中での役割を果たし貢献していくことで、街作りのリーダーを目指しています。
ありがたいことに政府の方が訪問してくださる機会が多く、街作りに関する意見を表明する場を与えられています。例えば、古北の住宅街では車の制限速度を時速30キロにすることや、歩道をより広くしてシェア自転車を置くことを禁止し、段差をなくしてお年寄りの方やお子様連れの方が安心して歩ける街にすることなどを提言しています。安心な街には多くの人が住もうとしますし、多くの人が住めば商業施設が増え、そのようにして街は発展していきます。具体的な成果を得るにはもう少し時間がかかりますが、出来る限り政府の方と協力していくことで、街に来る人やお客様、そして弊社の双方がメリットを得られる取り組みをしていきたいと思っています。


苦しい時期を乗り越えて

 上海髙島屋は2012年12月に開業、2013年9月にグランドオープンをしました。開店当初は来店客が非常に少なく、業績は計画の3分の1という厳しいスタートでした。開業から1年経った2013年末には約100ブランド、2014年末にも約80ブランドが撤退しました。2015年末までは、どのように空き地を埋めるかということに苦心していました。固定客を増やすべくスーパーやレストランに注力し、短期の展開であっても工夫を施して常備売り場のように見せたりとさまざまに手を打ちました。しかし、シンガポール髙島屋が開業10周年を経て黒字化を達成したように、百貨店は黒字になるまでに時間とお金がかかるものです。じたばたしても仕方がないという気持ちも一方では持ち続ける中で、2016年頃から徐々に業績は上向き始めるようになり、今ではレストランから出店のご要望を数多くいただきますし、今年は4つの日本のファッションブランドも入店してくださいました。とはいえ5年が経ったのみですので、まだまだ改善すべきところは数多くあると思っています。
9年前にこの土地を契約した際はほとんど何もない地域でしたが、再来年にかけて隣接地における商業ビルの開業や、古北における地下鉄の新駅の開設などに伴い、今後のさらなる来店者の増大が見込まれます。また、虹橋地区により多くのグローバル企業を誘致しようという「大虹橋計画」が上海市政府により進められており、その一環として、この付近では今まで少なかった単身者のビジネスマン向けのマンションが二つ当店の近くに建設されています。


ファミリーの方へ快適・安心を

 数ある百貨店の中で、当店はファミリー層の方にとって快適・安心で、普段の日もハレの日も来たくなる百貨店を目指すことで差別化を図っていきたいと考えています。私は、もっとお子様を中心とした世の中になっていくべきだと思います。自分の仕事や関わっていることが、次の世代にどう繋がり伝わっていくかという気持ちを胸に、お年寄りの方からお子様にまで優しいお店作りやサービスを心掛け、日本のものを中心に良い品物をしっかりと揃えるようにしています。小売業とは、消費者の生活を便利・快適にするため、生活様式や文化を変えられるような提案がなくてはならないと思います。もちろん消費者自らインターネットで購入することもできますが、日本でヒットしたものや、日本の便利なものなど消費者が知らないものも含めて、リアル店舗の中で提案していくことが大切だと考えています。そのようにして、髙島屋のファンになっていただける方を一人でも多く増やしていきたいと思っています。

開店間もない2013年6月に副総経理として赴任しました。固定顧客作りのため、日本髙島屋時代のキャリアを活かしつつ、スーパー・レストラン・日用品雑貨の強化に特に注力してきました。

PROFILE

KOMORI TOMOAKI

1960年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、株式会社髙島屋(東京店営業第8部)入社。東京店総務部人事グループマネジャー、東京店総務部副部長、東京店リビング販売部長、営業企画部営業統括グループ長、総務本部総務部リスクマネジメント担当を経て2013年に上海髙島屋百貨有限公司の副総経理として来海。総経理を経て2018年3月より現職。

<小森さんを知るキーワード>
趣味は料理と包丁収集

料理店を開業しようと思っていたほど料理が好きで、その関係で包丁を集めることにも凝っています。各地に足を運んで集めた結果、今では1日では使いきれないほど揃いました。

漆器への情熱
上海の自宅に置いてある漆器のセットです。漆器は中国から伝わったものであるにも関わらず、中国ではほとんど利用されていません。好きだからこそ、いつの日か中国で復活させたいと思っています。

こだわりのお酒売り場

私は日本酒が大好きで、日本酒をもっと広めていきたいという思いを込め、角打ちの雰囲気を演出した私好みのお酒売り場を設置しました。什器やお店作りにこだわった自慢の売り場です。

上海髙島屋百貨有限公司

住所 長寧区虹橋路1438号 MAP
電話 021-2223-2688