キーマンインタビュー
- ビジネス記事
- キーマンインタビュー
新日鐵住金諮詢(北京)有限公司
上海分公司 総経理 村田 淑氏
需要が高度化する市場の中
高級鋼の提供を中心として
プレゼンスの向上を図る
日中国交正常化当時から中国との友好事業を展開。市場構造が激変する中、鉄鋼生産の一大拠点である中国にてどのような戦略を描いていくのか、真相に迫った。
新半世紀におよぶ中国との関わり
新日鐵住金諮詢(北京)有限公司は、新日鐵住金が日本から中国向けに輸出する鋼材を現地で使っていただいているお客様の対応にあたる営業支援活動、および品質・技術等のフォロー活動を行っています。ほかにも、技術サービス面における顧客ニーズの聴取、製品の提案、顧客での使用状況、評価等の聴取、クレーム対応です。また、中国鉄鋼マーケット動向に関する情報収集、鉄鋼に関する政策情報の収集と分析に加え、事業会社、グループ会社、関連企業へのアドミ(経営管理活動)支援も行っています。
当社の中国との関わりは、今から46年前である1972年の日中国交正常化にまでさかのぼります。両国の象徴的な第一次友好事業として、同年に武漢鋼鉄の1700ミリ熱延ラインの近代化改造への協力要請を受けたことを始まりとしています。この事業は1974年6月に契約調印し、1978年12月に熱延工場のホットラン(稼動)に漕ぎつけています。
また、上海との関わりでは、1977年11月に当時の李先念副総理から、上海宝山地区に一貫製鉄所を建設してほしいとの要請を受け、日中友好条約を締結した1978年10月に鄧小平氏が訪日し、弊社君津製鉄所を視察した際に「これと同じ製鉄所を作って欲しい」との要請を受け、当時の稲山会長が協力を約束したことに始まります。この宝山プロジェクトは途中中断の危機に遭いながらも、日本政府のODA供与などもあり、1985年9月に第一高炉火入れ、その後、各工程の設備が一斉に立ち上がり、翌1986年にはすべての操業指標が目標を達成することができました。
高級鋼の供給による差別化
中国の鉄鋼市場は既にピークを過ぎようとしており、量的な拡大は求められません。また、中国の鉄鋼メーカーの製造実力の向上により、汎用的な鋼材は中国国内で製造できるようになっています。そのような鉄鋼マーケットの中で注目しているのは、習近平氏が述べているように、中国自身が「量」から「質」へ変化しようとしていることです。質的向上が進む中で、中国鉄鋼メーカーと差別化できるような高級鋼を供給していくことで中国の社会に貢献し、当社のプレゼンスを向上させ、社業にも貢献していきます。中国の粗鋼生産量は年間約8億トン、国内需要は約7億トンあります。日本の約10倍の規模です。日本ではニッチな高級鋼の分野でも、10倍の規模であればニッチではなくなります。そういう意味でも中国市場の重要性は増しているとも思います。また、世界鉄鋼生産の半分を占める中国のマーケットの変動が世界市場に及ぼす影響がますます高まっています。中国マーケットの動向に対する情報収集と分析がより一層重要であり、中国において当社が担う市場調査機能の充実は不可欠となっています。
世界に挑む企業として
お客様も材料の現地化を進めており、品質面で厳格でない部分は中国の鉄鋼メーカーからの調達にシフトが進んでいます。これらの現地調達化の流れを品質面での差別化や技術面でのソリューション提案などで使用価値を認めていただき凍結していくことが足もとの大きな課題です。加えて、今まで日系のお客様対応が中心でしたので、非日系の客様に対する攻めの営業への対応力が無くなっていることに危機感を感じていました。しかし、ここ数年の市場環境の急変や新市場の創出などもあり、日本人駐在員も現地スタッフも意識を変えて取り組み始めてくれていますので、今は頼もしく感じています。特に、足元で注目しているのは新エネルギー車の動向です。特にEV車の動向には目が離せません。当社はこのEVの伸長により、車体の軽量化に伴う高強度鋼(ハイテン)の使用比率増、駆動用モーターに使われる電磁鋼板、バッテリーに使われる電池用鋼板など新しい需要が創出されてくると思っています。これらの分野で我々の技術力が活かせるような高級鋼の優位性をお客様に理解していただき、ぜひ使っていただきたいと思っています。
中国の鉄の国内需要は既にピークアウトし年々漸減していくと予測されています。ただし、先程述べた通り、需要構造は高度化していくものと思います。高度化していく市場の中で、高級鋼を中心にお客様のニーズをキャッチし、お客様のニーズに合った製品の提供、ソリューションの提案を通じて新日鐵住金のプレゼンスを向上させていきたいです。新日鐵と住金が統合して5年半が過ぎ、両社が融合して次のステップへ進んでいく節目として、新日鐵住金は来年4月に「日本製鉄(にっぽんせいてつ)株式会社」に商号を変更します。当社も、日本発祥の製鉄会社として、未来に向かい世界で成長を続ける企業にふさわしい現地法人として今後も頑張っていきます。
当社の総経理として、日本人駐在員10名、現地スタッフ8名、運転手5名、私も入れて総勢24名のメンバーで華東地区における新日鐵住金および新日鐵住金の鋼材のプレゼンス向上に努めています。
PROFILE
<村田さんを知るキーワード>
中国支店からの記念品
中国地方の支店長を務めていた際の送別の記念品。マツダ様の社員や支店のメンバーと一緒に駅伝やレガッタ大会に参加したりなど、仕事以外でも充実した時間を過ごすことができました。
大分クラブからの記念ボール
大分製鉄所の工程業務部長を務めていた際の記念品。当時、野球部の部長(責任者)を務めていました。試合応援だけでなく、練習に参加したり、球場開きの際に挨拶や始球式を行ったりしていました。
大分市歳末チャリティー
高級鋼の提供を中心として
プレゼンスの向上を図る
日中国交正常化当時から中国との友好事業を展開。市場構造が激変する中、鉄鋼生産の一大拠点である中国にてどのような戦略を描いていくのか、真相に迫った。
新半世紀におよぶ中国との関わり
新日鐵住金諮詢(北京)有限公司は、新日鐵住金が日本から中国向けに輸出する鋼材を現地で使っていただいているお客様の対応にあたる営業支援活動、および品質・技術等のフォロー活動を行っています。ほかにも、技術サービス面における顧客ニーズの聴取、製品の提案、顧客での使用状況、評価等の聴取、クレーム対応です。また、中国鉄鋼マーケット動向に関する情報収集、鉄鋼に関する政策情報の収集と分析に加え、事業会社、グループ会社、関連企業へのアドミ(経営管理活動)支援も行っています。
当社の中国との関わりは、今から46年前である1972年の日中国交正常化にまでさかのぼります。両国の象徴的な第一次友好事業として、同年に武漢鋼鉄の1700ミリ熱延ラインの近代化改造への協力要請を受けたことを始まりとしています。この事業は1974年6月に契約調印し、1978年12月に熱延工場のホットラン(稼動)に漕ぎつけています。
また、上海との関わりでは、1977年11月に当時の李先念副総理から、上海宝山地区に一貫製鉄所を建設してほしいとの要請を受け、日中友好条約を締結した1978年10月に鄧小平氏が訪日し、弊社君津製鉄所を視察した際に「これと同じ製鉄所を作って欲しい」との要請を受け、当時の稲山会長が協力を約束したことに始まります。この宝山プロジェクトは途中中断の危機に遭いながらも、日本政府のODA供与などもあり、1985年9月に第一高炉火入れ、その後、各工程の設備が一斉に立ち上がり、翌1986年にはすべての操業指標が目標を達成することができました。
高級鋼の供給による差別化
中国の鉄鋼市場は既にピークを過ぎようとしており、量的な拡大は求められません。また、中国の鉄鋼メーカーの製造実力の向上により、汎用的な鋼材は中国国内で製造できるようになっています。そのような鉄鋼マーケットの中で注目しているのは、習近平氏が述べているように、中国自身が「量」から「質」へ変化しようとしていることです。質的向上が進む中で、中国鉄鋼メーカーと差別化できるような高級鋼を供給していくことで中国の社会に貢献し、当社のプレゼンスを向上させ、社業にも貢献していきます。中国の粗鋼生産量は年間約8億トン、国内需要は約7億トンあります。日本の約10倍の規模です。日本ではニッチな高級鋼の分野でも、10倍の規模であればニッチではなくなります。そういう意味でも中国市場の重要性は増しているとも思います。また、世界鉄鋼生産の半分を占める中国のマーケットの変動が世界市場に及ぼす影響がますます高まっています。中国マーケットの動向に対する情報収集と分析がより一層重要であり、中国において当社が担う市場調査機能の充実は不可欠となっています。
世界に挑む企業として
お客様も材料の現地化を進めており、品質面で厳格でない部分は中国の鉄鋼メーカーからの調達にシフトが進んでいます。これらの現地調達化の流れを品質面での差別化や技術面でのソリューション提案などで使用価値を認めていただき凍結していくことが足もとの大きな課題です。加えて、今まで日系のお客様対応が中心でしたので、非日系の客様に対する攻めの営業への対応力が無くなっていることに危機感を感じていました。しかし、ここ数年の市場環境の急変や新市場の創出などもあり、日本人駐在員も現地スタッフも意識を変えて取り組み始めてくれていますので、今は頼もしく感じています。特に、足元で注目しているのは新エネルギー車の動向です。特にEV車の動向には目が離せません。当社はこのEVの伸長により、車体の軽量化に伴う高強度鋼(ハイテン)の使用比率増、駆動用モーターに使われる電磁鋼板、バッテリーに使われる電池用鋼板など新しい需要が創出されてくると思っています。これらの分野で我々の技術力が活かせるような高級鋼の優位性をお客様に理解していただき、ぜひ使っていただきたいと思っています。
中国の鉄の国内需要は既にピークアウトし年々漸減していくと予測されています。ただし、先程述べた通り、需要構造は高度化していくものと思います。高度化していく市場の中で、高級鋼を中心にお客様のニーズをキャッチし、お客様のニーズに合った製品の提供、ソリューションの提案を通じて新日鐵住金のプレゼンスを向上させていきたいです。新日鐵と住金が統合して5年半が過ぎ、両社が融合して次のステップへ進んでいく節目として、新日鐵住金は来年4月に「日本製鉄(にっぽんせいてつ)株式会社」に商号を変更します。当社も、日本発祥の製鉄会社として、未来に向かい世界で成長を続ける企業にふさわしい現地法人として今後も頑張っていきます。
当社の総経理として、日本人駐在員10名、現地スタッフ8名、運転手5名、私も入れて総勢24名のメンバーで華東地区における新日鐵住金および新日鐵住金の鋼材のプレゼンス向上に努めています。
PROFILE
むらた さとし
1962年生まれ。岡山生まれ、神戸育ち。1986年、慶応義塾大学経済学部卒。同年新日本製鐵㈱入社。釜石製鉄所労働人事室、1989年厚板営業部、1994年大分製鉄所工程業務部外注管理室掛長、1996年厚板営業部、1999年名古屋製鉄所工程業務部外注購買グループリーダー、2004年厚板営業部、2009年大分製鉄所工程業務部長、2013年中国支店長を経て、2015年より上海事務所長兼新日鉄住金諮詢(北京)有限公司上海分公司総経理。<村田さんを知るキーワード>
中国支店からの記念品
中国地方の支店長を務めていた際の送別の記念品。マツダ様の社員や支店のメンバーと一緒に駅伝やレガッタ大会に参加したりなど、仕事以外でも充実した時間を過ごすことができました。
大分クラブからの記念ボール
大分製鉄所の工程業務部長を務めていた際の記念品。当時、野球部の部長(責任者)を務めていました。試合応援だけでなく、練習に参加したり、球場開きの際に挨拶や始球式を行ったりしていました。
大分市歳末チャリティー
大分製鉄所の幹部たちが全員参加するチャリティーイベントを毎年大分市で開催し、大勢の方の前で踊りを披露しています。午前に踊った後、午後の部はお酒も入り、ご覧のように楽しく踊りました。
合わせてチェックしたい!
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- 芙子帝風商貿(上海)有限公司/富士工業販売株式会社
- 董事総経理/常務取締役海外事業推進室 室長 時松 良 氏
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- 上海修曼人才有限公司/修曼(上海)商務諮詢有限公司
- 董事長・総経理 三反田 章 氏
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- 西村あさひ法律事務所 上海事務所
- パートナー弁護士兼上海事務所代表 野村 高志氏
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- 株式会社ロフト/楽瑚特商業管理(上海)有限公司
- 取締役 執行委員・ 海外事業部 部長/董事・総経理 庄野 桂一郎 氏
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- 上海特思尔大宇宙商务咨詢有限公司/ トランスコスモスチャイナ
- 董事長・CEO 山下 栄二郎 氏