キーマンインタビュー
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マルハ(上海)貿易有限公司 大連分公司
総経理 吉川 俊介氏
世界の海の魚を中国で
新鮮に味わえる時代を牽引
古くから中国との関わりをもって
かつて日本船籍の漁船は中国近海まで来て魚を獲ることができましたが、1977年の200海里漁業水域制定により、いつもの漁場にいけなくなりました。そこで中国側で獲れた魚に対して、水産品加工機械、冷蔵庫を提供する補償貿易(物々交換)を行い、中国政府の大きな信頼を得ることができました。
この頃よりお付き合いのあったパートナー企業や人間関係は、今なお続いており、まさにわが社にとっての大きな財産。彼らの存在があるからこそ、現在も継続的に中国事業を展開することができるのだと認識しています。
海外の水産品を大連へ集結
ここ大連拠点は1983年に駐在員事務所として設立。ワカメ養殖や加工技術の指導をするなど現地工場と手を組み、日本向け水産品の買付、加工貿易事業をスタート。現在では大連産ワカメ、丹東産アサリの買付をはじめ、台湾海峡産のアジフライ、ノルウェー産のシシャモ、サバの加工、ペルーアカイカ、マイカ、骨なし切り身などを取り扱います。
当初は日本に比べ人件費が比較的安く、仕事ぶりもスピーディーで、複雑な加工も任せており、1990年代の最盛期には、管轄する山東省を含め年間8千~9千トンもの原料を扱っていました。その後人件費高騰により、現在大連市区からは撤退。近郊の丹東、庄河、山東省に工場機能を有しています。惣菜用のアジフライは山東省にて加工、老人介護施設・医療機関向けのマダラ、アカウオ、スケソウダラ、ホキなど、骨なし切り身は庄河にて加工。骨は1本でも残っていると大問題。一枚ずつエックス線検査するほど非常に気を遣う商品となっています。
2012年に駐在員事務所から現地法人としてマルハ(上海)貿易有限公司 大連分公司を設立。これを機に国内販売を本格化。現状は日本向け9割、国内向け1割という割合ですが、逆に伸びしろがあり、どうやって攻略していくかが課題。調達力の強化が要になると踏んでいます。
新鮮な刺身から高品質なキャットフード缶詰まで
これまでは、人件費が安いという長所を活かした加工拠点としての中国でしたが、これからは商品を食べていただくための市場として、どう進めていくか常に頭を働かせています。中国は広大な国土を持つわりに、海岸線の長さが日本の4分の1しかありません。これは海の魚に馴染みがないことを意味し、さらに内陸部になるとそれは顕著です。海に近いエリアでも淡水魚を食す習慣が多いことも、伸びしろが大きいと思う要因のひとつです。
広大な国土による物流の問題も大きな壁でしたが、交通インフラの発達により大きく進化し、冷蔵・冷凍車などの数も格段に増加しました。これからはより多くの中国の皆さんが海の魚を食べる時代が来ると確信。おいしさはもちろん、できれば時季に応じた「旬」を楽しんでいただけるようになりたい。新鮮さを楽しんでいただくには、やはりお刺身として味わっていただきたいなど期待は膨らむばかり(笑)。ここ近年、日本より本マグロ、甘エビ、ボタンエビなどを輸入し、国内販売に注力。私どもが養殖した本マグロを上海へ空輸し、時間や鮮度保持を考慮した上で、ニーズに合わせて中国国内の他都市へ再度空輸し、各地の日本料理店などで消費いただいています。このように空輸を駆使することで、鮮度の高い刺身を食べてもらう環境はすでに整っています。いかにしていいモノをリアルタイムで持ってこれるかといった商品提案や物流手段の確保が力の見せどころとなります。
また、マルハニチロは日本でキャットフード缶詰のトップシェアを誇ります。(グループ会社・アイシア)。猫が好むサカナ=水産品に強いわが社ならではの商品です。「餌」という認識はなく、中国国内の商談会でもお客様の前で社の人間が実際に食べて見せるなど、人が食べるものと同様の鮮度と品質で提供。04年に国内販売を開始し、可処分所得の増加でペットを飼う余裕のある家庭が増え、12年を境に売上を一気に伸ばしました。中国では「黒缶」、「紅缶」、「健康缶」を展開しますが、加速し続けるペットブームに乗る形で、日本で販売しているワンランク上の商品や幼猫・高齢猫向けも展開している最中です。
毎年秋に青島で行われる漁業博覧会。昨年は45カ国1,500社余りの企業が参加、36,000人の来場者を誇り、同イベントを行うブリュッセル、ボストンをしのぐ世界最大級のものです。マルハニチロは今年も出展いたします。
PROFILE
よしかわ しゅんすけ
1966年生まれ、長野県千曲市出身。高校生の時にNHK特集「シルクロード」を見て中国に魅了され、麗澤大学外国語学部中国語学科へ。在学中の1988~89年に在北京日本大使館に派遣員として2年勤務。卒業後大洋漁業㈱(現マルハニチロ)入社。以降中国貿易事業に従事し、中国においては、上海に03~10年、大連に16年より駐在。趣味はランニング。
<吉川さんを知るキーワード>
大連長野県人会の会合にて。毎回会の最後には県歌である「信濃の国」を全員で大合唱します。海外で同郷の仲間が集いこの歌を歌うと、故郷を想う気持ちが熱く高まります。
若き日の旅の相棒
バイクが好きだった若き頃。入社して間もなくのころ購入したカワサキのZXRと共に。休暇を利用して、東京の自宅から四国、九州など遠方へのツーリングを楽しんだものです。
チーム「マルハ大連」!
今年は会社メンバーで揃いのTシャツをあつらえ大連マラソンに参加。リレーマラソンで6名が一丸となり、4時間9分7秒のタイムで無事ゴール。早くも来年の参戦に意欲満々(笑)。
℡(0411)8369-0081
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