キーマンインタビュー

日本通運株式会社
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日本通運株式会社

常務執行役員・東アジアブロック地域総括 杉山 龍雄氏

 「新・世界日通」の急先鋒として
中国に根ざし、中国とともに
世界を股に掛けたサービスを


1981年に外資系初の物流企業として中国に進出。それ以来、変革を重ねながら中国をはじめとした東アジア地域の巨大市場に挑んできた同社にお話を伺った。


中国アジア版「物流のデパート」

 日本通運グループは全世界をブロックごとに区分しており、我々は東アジアブロックを担っています。中国大陸、香港、台湾、そして韓国の4つの国家・エリアに東アジアブロックの拠点があり、最近ではさらに、「一帯一路」沿線のカザフスタンを中心とした中央アジア5カ国、モンゴルを含めたエリアで企業活動を行っています。
 1980年代の進出当初は日系企業の生産部材の輸入、製品の日本向け輸出がメインでしたが、中国経済の発展にしたがって業務内容は大きく変わりました。日系企業の投資が一部鈍化しているのは確かですが、欧米企業は活発ですし、最近は海外に進出する中国の民営企業の輸出入業務、または進出した国々での物流業務を担っています。一方で、内需の拡大にともなった国内経済への対応を重視しています。よって、鉄道やトラック、倉庫、内航輸送などの国内物流にも取り組んでいます。全世界から輸入した商品を当社の倉庫で保管し、遠くは新疆・ウルムチの店舗まで配送することもあります。昨今は「一帯一路」の国家政策にともない、中国発欧州向けの鉄道輸送が整備されました。その上で、当社のような物流業者が介在し、鉄道の輸出入業務の提供が可能になりました。また、中国は数多くの国境と接しており、トラック輸送が盛んです。上海―シンガポール間を陸路で運ぶSS7000というルートを当社はいち早く確立し、中国の部材をASEAN諸国の工場へ輸送しています。これは当社のネットワークならではの強みです。最近はASEANで生産されたアパレル製品がこのルートで入り、中国で販売するという逆の流れができてきており、大きな特色であると考えています。。


アウトバウンド事業も強化

当社・グループのアウトバウンド事業は割合的には少ないですが、上海急線企業管理有限公司とライセンス契約を締結し、上海申通地鉄資産経営管理有限公司が所有する上海地下鉄徐家匯駅構内での店舗開発コンサルティング事業も開始。2015年、上海の地下鉄は15路線366駅を有し、輸送人員も約30億人超えなど世界第一の規模を誇ります。しかし輸送力強化を優先してきたため、駅構内の店舗開発は成長の余地があります。そこで注目されたのが日本の駅構内の店舗開発、運営ノウハウでした。当社グループは「国内外の事業から培ったノウハウの活用」を掲げ、東南アジアにおける経済成長のサポートや、現地パートナーとの連携などによる事業推進、事業企画の拡大に積極的に取り組んでおり、今回も同事業を通じ、上海地下鉄利用者の利便性向上に貢献するとともに、日本文化などの発信を行うことで、駅構内で時間を消費する新しいスタイルの提案を目指しています。
 話題となるような駅構内を作り上げようと努力していますが、中国で初となる同事業で頭を悩ますこともあります。625平米のスペースに飲食店・雑貨店など9店舗をオープン予定ですが、中国の関連規制が厳しく、店選びには苦労しました。ですが滅多に携わることのできないこのような事業に、当社・グループならと信頼していただき、携われることを誇りに思っています。


ワールドワイドな事業展開

現在、日通は「新・世界日通」というスローガンを掲げ、全世界への拡大を図っています。現在は海外関連の売上が全社の4割を占めています。その4割のうち、中国を含めた東アジアが3割です。その数字からも中国は非常に重要なエリアですし、当社としては日本に近く、日本のビジネスとも関係の深い東アジアブロックを重要視しています。顧客は日系企業が多いですが、例えば航空輸送など、非日系企業が日系企業を超えた業種もあります。特筆すべきは中国のグローバル企業が成長を遂げたことです。例えば、ドローン市場は中国が世界シェアの70%を占めています。そのような企業と取引をするのは大変ですが、当社としても誠心誠意対応し、案件をいただけるようになりました。国営企業であっても公平な入札をして、中国企業だけはなく外資を利用するケースも増えています。きちんとしたサービスを提供すれば、外資企業であっても受注できるということです。

 当社の特徴の一つに非日系企業向けの営業部隊があります。7カ国の社員を雇用して、多様な言語を用いて営業をしています。例えば、「一帯一路」沿線を担当しているロシア人女性は頻繁に中央アジア諸国やロシアへ赴き、ルートの開発やセールスを行っています。彼女は中国語も話せる優秀なマネージャーです。そのような人材をより増やし、全世界に築いたグローバルな拠点を活用したサービスの提供をしていきます。


中国を尊重し、中国とともに発展

ある日突然大型車両の規制ができるなど、中国では何が起こるか分かりません。だからこそ、当社が常に意識していることは社員との対話です。当社のビジョンを説明し、定期的にマネージャーと昼食会を開催することで、社員の意見を吸い上げて反映しています。そして中国を大事にし、中国人を尊重することの必要性を経営幹部に何度も伝えています。それは社員にだけ該当することではありません。当社では下請け業者という言葉を使わず、パートナーと呼びます。パートナーを含めて大事にすること。その為にも研修を重視し、当社が東アジアで行っている研修は門戸を開き、パートナーや外部の関係者も受け入れています。このような積み重ねがあるからこそ、緊急時に助けてくれる存在が現れ、結果的にプラスになるのです。
 経営計画の下でこれからも健全に成長していく為には、やはり現地幹部を引き上げなくてはなりません。その上でもっと教育に注力し、中国人に力を発揮してもらうことがキーになってきます。最終的には社員全員が幸せになり、仕事が楽しいと思えるような会社にし、日本の本体とともに中国に貢献したいです。人材育成プログラムや講座などもこれからより拡大していきたいですし、奨学金の設立や植樹活動などを通じて、今までの恩を返していかなくてはならないと考えています。
 現在は中国経済が厳しいと思われがちですが、実際に駐在していると経済の動きを身を以って感じますし、内陸の内需は非常に旺盛です。これらをきちんと理解し、日本人を含め多くの方に発信し、より多くの企業に中国に来ていただきたいです。


台湾日通の董事長などを歴任し、十年以上一貫して東アジア地域の企画開発や経営に携わってきた杉山氏。母校の校歌の歌詞の一節である「人種の色と地の境 我が立つ前に差別無し」を胸に奮闘中。


PROFILE


日本通運株式会社

常務執行役員・東アジアブロック地域総括

杉山 龍雄氏


1959年東京都生まれ。拓殖大学外国語学部中国語学科卒業後、1982年日本通運入社。1993年から4年間、最初の上海勤務、2004年から6年間、中国室長として二度目の上海勤務。2010年から台湾日通社長、2014年に東アジア地域を担当する執行役員に就任し、三度目の上海勤務。2017年に現職の常務執行役員に就任。趣味は近代中国の史跡巡り。



杉山さんを知るキーワード

学生時代から思いは変わらず


母校である拓殖大学校歌に上記の一節があります。作詞は拓殖大学四期生の宮原民平教授によるもので、勇壮な曲にも調和して、学生時代に大変感銘を受けました。今でも同じ想いを抱いています。


客員教授として学生を応援



2014年から北京物資学院物流学院へ、2016年からは上海海事大学へ「日通奨学金」を設立し、寄付講座を開設。寄付講座は年2回実施しています。また、両校からは客員教授の称号も授与されています。


上海で植樹活動



CSR活動として本年6月4日に上海市内で事業会社主催の親子参加型植樹活動に参加しました。約70名の参加者とともに15本の木を植えました。このほか、韓国でもCSR活動を推進しています。



日通国際物流(中国)有限公司

長寧区延安西路2299号上海世貿商城11楼G11
℡ (021)6295-0202
www.nittsu.co.jp/

詳細は日通国際物流(中国)有限公司


日本通運株式会社

住所 上海市长宁区延安西路2299号上海世貿商城11楼G11 MAP
電話 021-6295-0202

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