キーマンインタビュー
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書道家 華 戈さん
店舗や飲食店の看板、映画タイトルなど、香港の至るところにその作品があふれている華戈さん。彼の書道に対する想いを伺った。
家族の影響で書道の世界へ
書道に興味を持ったきっかけは家族、特に父親の影響が大きかったのだと思います。幼少時代は中国本土に住んでいましたが、家が貧しく子どもの遊びといえば野外で鳥や魚を捕るぐらいでした。私の父は書道の専門家でした。よく叔父や友人を家に呼んでは書道について討論したり、切磋琢磨していました。その傍らで私も書道に関するたくさんの知識を聞き、書き方を見ていました。そこから、どんどん書道に対する興味が大きくなっていったのです。
自然をモチーフに独学
とは言え、当時私に書道を教えてくれる人は誰もいませんでした。ですので、自分で書道展を覗いたり、書店で書道に関する専門書を読み漁ったり、お店の看板の文字をじっくり観察したりして父親たちの「書道の理論」を検証しました。
私に大きなインスピレーションを与えてくれたのは自然です。昔は夕食の後の退屈しのぎといえば散歩だけです。毎日の散歩の中で私はいろいろな「形」を見つけ、覚えていきました。変化する雲のシルエット、道行く人々の姿勢、樹木の輪郭など多彩な「形」を吸収しました。漢字はもとはといえば象形文字で、自然の要素をもとに造られた文字なのです。
また、私は書道の練習をするとき、手本の文字をコピーするのは好きではありません。多くの人は手本と同じように書くのにこだわりますが、それでは自分らしさを失ってしまいます。もちろん先人が残してくれた文字は大変美しいものがあり、貴重な文化遺産ですが、書道家は先人のいいところを学び、好きでないところを自分なりに改善するべきだと考えます。
香港で始まった書道の事業
学んだことは必ずしも生業になるとは限りません。私が香港に来たときは、観光地で観光客の似顔絵を描いたり、「揮春」(旧正月に飾る対句)を書いたりしていましたが、警察の取り締まりばかりに遭い、筆で食べていくことはできませんでした。普通に就職をしたのですが、転機となったのは同僚にすすめられて参加した書道コンテストです。正直、書道を生業にすることを諦めかけていたので気が進まなかったのですが、そのコンテストで優秀賞を獲得しました。そこから、お店の看板を書いてほしいとの依頼が来るようになり、嬉しいことに口コミでどんどん依頼が増えていきました。80年代には高齢で引退した同業者の小さな店舗を引き継ぎ、旺角を拠点に書道の道を歩み始めました。旺角は芸能界関係者が多く出入りする場所であり、映画の道具として字を書いてほしいという依頼から始まり、映画タイトルも手がけるようになったのです。
書道で大切なのでは集中力です。歌や武術と違い、書道には決まったモチーフがありません。文字の太さ、形、濃淡などのバランスを書きながら考えていきます。例えるなら、忙しいネイザンロードを歩いているようなものです。すれ違う人にぶつからないように慎重に進んでいく、専念しないとできないことです。
仕事から文化伝承へ
7年前に書道教室を始め、生徒に書道を教える先生になりました。書道の先生はいわば庭師です。庭の花木を育てるように、生徒の強みや弱みを見極め、一人ひとりにあった指導を提供する。以前は仕事に最善を尽くすのみでしたが、今は若い世代を育てることも大切にしています。書道の美しい伝統の継承に貢献できればと思います。
PROFILE
ワ― ゴー
本名馮兆華(フォン・シュウ・ワ―)。広東省順徳出身、1970年代に来港。書道家として「美心皇宮」や「徳福広場」などチェーン店やショッピングモールの看板を多数執筆。また、『グランド・マスター』や『真説チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』など60以上の映画タイトルも手がける。
一心不乱に文字をすらすら書いていく
この日は唐詩『楓橋夜泊』を書いてくれた
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