キーマンインタビュー
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COEDO BREWERY
代表取締役社長 朝霧 重治氏
丹精込めて造り上げた日本のクラフトビールを世界へ送りだす
有機農業を盛り上げるために生まれ、今では「日本のクラフトビール」として世界で飲まれているCOEDOビール。同社の朝霧社長にビールに対する想いを伺った。
有機農業からビールへ
COEDOビールは、協同商事という有機農産物の専門商社のプロジェクトとして生まれました。緑肥として使われていた大麦や、規格の関係で廃棄されていた川越の名産物・サツマイモでビールを造ったらものすごく面白いかもしれないという発想からスタートしたのが、1980年代後半のことです。当時、日本ではCOEDOのような小規模なブルワリーは法律に認められておらず、ビール醸造に取り組むことはできませんでした。それでも、ビールを作りたい一心で準備を進めていきました。そして、1994年に酒税法が改正され、COEDOは規制緩和ののち1996年にビール事業を始めました。
麦とサツマイモだったら、焼酎などを製造ることもできましたが、私たちは社会にはない新しい価値や、新しい楽しみを提供するということに常に取り組んてきた会社です。他の方が既にやっていることにトライするのではなく、新しいことにチャレンジしたいと考えました。日本やアジアの方たちにビールの楽しさを伝えていくというプロジェクトが当時の日本にはなかったので、ただ喜んでいただきたいと思いビールに決めました。
無限に広がるビールの楽しさ
ビールの典型的なイメージというと「黄金色で、白い泡があって、爽やかにゴクゴク飲める」というのが一般的ですが、実は世界中でとても幅広い種類のビールが造られています。例えば原材料でいうと、ビールの白い泡と香り、苦みを作るホップはさまざまななタイプがあり、麦もコーヒー豆のようにローストで工夫することができます。また、COEDOのように副原料にサツマイモを使用することで、いろんな色彩のビールが生まれます。アルコール飲料のなかでも、ビールは非常にバリエーション豊かで面白い存在です。さらに、食事とのペアリングや、グラスウェアでもいろいろ楽しめます。
今、ビールはまさにルネッサンス期で、例えば昨年にリリースしたものですが、今までビールの原料ではなかった「梅」を使用し、ニュージーランドでワインの醸造に使った樽で1年間熟成させたビールがあります。今までのビールは、「フレッシュなものを飲む」ということを強調してきたのですが、樽の中で熟成させることで、樽についていた白ブドウや木の香りが加わります。
川越から世界へ羽ばたく
COEDOビールはいつも「COEDO」で、日本語では書きません。日本人だけではなく、世界の方たちに向けて開発したものですので、万国共通で「COEDO」です。また、商品パッケージからウェブサイトまで、デザインにも注力してきました。ミシュラン3つ星のレストランからビアバーまで、どこに出してもその方たちのビジネスを邪魔することのない、きちんとしたブランドを作るということに取り組んできました。
海外では、ビールのコンテストなどでの受賞をきっかけにCOEDOを知っていただくことが多いです。どこの国の方が飲んでも美味しいと思っていただける、きちんとしたものづくりを誇りとしています。それを自分たちが「美味しい!」というのだけでなく、国際的な品評会で評価をいただくことで、プロの人たちにも認めてもらえているということを理解していただきたいです。そして、「そんなにおいしいのなら飲んでみよう、販売してみよう」ということに自然と繋がっていけばと思います。
海外販売は、ビールの輸送が大きな課題です。ビールの品質を損ねる3要素は酸化、紫外線と急激な温度変化です。COEDOでは、ブルワリーでビールを充填した後、5℃の冷蔵庫で保管します。日本から他国へ運送するときも冷蔵コンテナで5℃を維持し、目的地についたらまた5℃で冷蔵される、このコールドチェーンの導入を徹底しています。もちろんコストは高くなるのですが、せっかく飲んでいただいた方をがっかりさせたくないので、ビジネスパートナーにも丁寧に説明し、納得していただいています。また、COEDOでは、注文を受けてからビールを作り、常にフレッシュなものを提供しています。生産としては大変なのですが、輸送途中の日数ロスも考えると、いつもフレッシュなものを作って、フレッシュなものを出荷していくことを大事にしています。
ビールを通じて世界を川越に
私たちの活動のもう一つのテーマは「グローカル」です。埼玉川越でビールを醸造していますが、そこには江戸時代の文化や街並みが残っており、代々続く伝統工芸も息づいています。COEDOビールを通じて川越や日本の職人について知っていただけたらと思います。COEDOはどんどん海外に出ていますが、世界の方々には川越に来ていただきたい。ですから、私たちは海外でビールは作りません。日本で作り続け、その現場を見に来ていただきたいのです。そうして、互いの交流が生まれるとことを願っています。
「ビールの面白さをアジアの方々にも伝えたい!」と2015に香港でオープンした「COEDO Taproom」。同社の代表の5種のビールを生で楽しめるほか、串焼きをメインとした料理とのペアリングも提案している。
PROFILE
あさぎり しげはる
埼玉県川越市出身。一橋大学商学部卒業後、三菱重工に入社。1998年に株式会社協同商事に入社。2006年ビール事業部門を再構築し、「COEDO」のブランドで新たにスタート。現在、代表取締役社長として、日本の職人達によるものづくりやビールの豊かな味わいの魅力を「COEDO」を通じて世界に発信している。
<朝霧さんを知るキーワード>
バックパックで世界を旅する
学生時代は世界を旅して回ったバックパッカーでした。香港に初めて来たのは、20年以上前の22歳の頃です。ここ数年は、仕事で香港に来られるようになってうれしい限りです。写真は、1997年中国本土で旅していた時、黄山で撮ったものです。
植物を育てる日々
植物を育てたり、料理を作るのが大好きです。自宅の庭にもタイムやセージなどのハーブ類、花、オリーブなどいろいろ植えています。中でも、ホップを育てたりするのはもはや趣味です。畑でも育てています。植物のある生活は楽しいです。
日本の職人魂を伝える
細部にこだわり、常に技術を磨く日本の職人精神を伝えたいと、職人たちとのコラボレーションも行っています。写真は、富山県の真鍮の生活用品ブランド「FUTAGAMI」とコラボした栓抜きです。非常に繊細な仕事が施されている、美しい作品です。
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