キーマンインタビュー

上海好侍食品有限公司
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上海好侍食品有限公司

董事・総経理 羽子田 礼秀氏

2020年、11億人に増加する

中間層がターゲット

カレーを中国でも人民食に

1997年、ハウス食品株式会社の中国カレー事業立ち上げから携わり、約20年にわたり中国での小売取引業の第一線で活躍する羽子田氏に話を伺った。



中国小売取引業特有の「導入料」


 1997年に弊社ハウス食品株式会社は上海市にカレーレストランを設立。中国に向けてカレー事業を立ち上げました。当時の社長から「米を食べる国民は必ずカレーを受け入れてくれる」と言われ、中国におけるカレーの需要を探るため、私は「上海カレーレストラン有限公司」の総経理として赴任しました。開店当初は50%以上が日本人で「やっぱり日本人はカレーが好きだった」と報告する自分が脳裏に浮かびましたが、開店1カ月後から中国人の比率がどんどん伸びてきました。当時の最低賃金が800元の時代に、店舗の平均単価は42元とかなり割高な価格でしたが、きれいな店内で女性客の利用も多く、花園飯店向かいの立地ということもあり、デート向きのオシャレな店と評判になりました。3カ月で中国人顧客が88%を超え、中国でもカレーは受け入れられると確信した弊社は、本格進出に伴い2005年に上海に工場を建設。家庭用カレー事業に乗り出しました。

 中国人顧客にも受け入れてもらえるよう「カレースパイスに八角を加える」「カレーの色を黄系統にする」などの改良を加えたバーモントカレーや、業務用ジャワカレーを発売。2008年当時で4億6千万人いるとされた中間所得層(月収5万~35万円)をターゲットに据えてカレービジネスをさらに拡大を図りました。しかし、中国のスーパー(量販店)に商品を陳列するためには、1アイテムにあたり各店舗に数百元から数千元の「導入料」を支払わなければなりません。また、販促の為のディスプレーの設置も、大量に商品を陳列する際にも場所代を支払う必要がありました。売り手市場の中国小売取引業が「不動産業」と揶揄される所以ですが、彼らは売買差益よりこのような営業外利益を重視しており、陳列も導入料の条件次第。品揃えに顧客のニーズは反映されておりませんでした。中国において消費財をスーパーで販売してもらうには、初期投資が絶対に必要となります。「我慢した会社が中国で勝つ」と言うのが私の座右の銘ですが、弊社はこれまでに数億円以上の導入料を中国の各スーパーに支払い、利益が出るようになるまで8年の歳月を要しました。


20万回に及ぶ試食活動


 莫大なコストを償却し利益を出すために、弊社はさまざまな企画に取り組みました。まず、これまでカレーライスを食べる習慣の無かった中国人顧客にカレーを知ってもらうため、カレーライス食文化の啓蒙活動を行いました。各スーパーで店頭試食会を実施する人員の育成や、栄養士による学術発表などで「カレーが美味しく、健康に良い」というアピールを行いました。そのほか、各家庭の子どもに向けたカレーイベントを企画。子どもがカレーに親しんでもらえるよう、マスコットキャラクターや体験型施設を設置しました。また、弊社の営業チームが中国全土を回り、業務用カレーを地元企業や日系工場、大学の食堂に提供。コンビニや地元レストランチェーン店、さらにはチベット自治区まで赴き、各地で実際に食べてもらい、受注に繋げてきました。カレーレストラン事業「CoCo壱番屋」は弊社の関連企業として、カレー普及の先兵を担っております。「外で食べてもらい、家庭で作る」という図式を生み出すために行った、スーパー店頭やイベント、工場での試食活動はこの10年間で約20万回に及びました。現在はカレー以外にも「ハヤシソース」「シチュー」とアイテムも増やし、調味料企業としての拡大も図っています。



カレーを中国でも人民食に


 中国での事業体系も、環境変化のスピードとリスクに対応した形にしました。2014年に資本金9050万ドルをかけてホールディングカンパニーを創立。上海と大連にあるカレー生産工場、中国国内の「CoCo壱番屋」を傘下に置き、事業拡大に向けた組織の強化に努めました。今後の目標はひとつ。「カレーライスを中国でも人民食にする」ことです。弊社主力商品のバーモントカレーで見た場合、商品認知率は中国全土で約30%(上海市は60%)と低い水準です。年間購入世帯率も全国18都市平均で10%ほど。上海市全体でさえ約30%にとどまっており、総人口13億人の比率で見た場合、わずか5%ほどと言われています。ただリピート率は65%と高く、味覚を含む商品設計には満足されていると推測できます。人口比でまだまだ伸びしろがある上に、中間所得層は2020年には11億人強まで増加すると見込まれており、ターゲット層は日々増加しています。18年には浙江省にて最新のカレー工場を設立。より多くの生産に対応できるようにしました。カレーライスを人民食にするために、まずは中国における子どもの好きなメニューに、カレーがベスト10入りするよう食文化啓発活動を続けていき、20年までに中国全土のカレー購入世帯率を30%にできるよう努めてまいります。




問題が生じたときは、すぐに動かず考えます。中国ビジネスにおける5つの「あ」である「あわてず、あせらず、あてにせず、あなどらず、あきらめず」を実施してトラブルを乗りこえてきました。


PROFILE


上海好侍食品有限公司 

董事・総経理

羽子田 礼秀氏 


1954年生まれ。78年中央大学経済学部卒業後、ハウス食品工業株式会社(現ハウス食品株式会社)入社。大阪支店、本社営業部で18年間営業を担当し、96年中国カレービジネス立ち上げのため上海駐在開始。中国国内レストラン、販売、工場で総経理を経験し、99年に台湾ハウス食品代表、2003年東京支店販売マネージャーを経て、07年上海・北京代表処首席代表。09年より現職。



羽子田さんを知るキーワード

我慢した会社が勝つ


中国では「やらない、やれない、やりたくないことをあえてやる」ことが重要になります。我慢した会社が勝つ。我慢した時期があったから今につながりました。


柔道は講道館五段!


学生時代から続けてきた柔道は現在、講道館五段にまでなりました。厳しい稽古で培った体力と精神力、そして人とのつながりは上海でも生きています。


食堂で食べるカツカレー



上海工場食堂では金曜日を「カレーの日」に定め、カツカレーを社員や来客者に提供します。八角入りのバーモントカレーと入っていないジャワカレーが交互に出ます。



上海好侍食品有限公司

上海市嘉定工業区興邦路368号 
℡ (021)3351-7333

詳細は上海好侍食品有限公司 

上海好侍食品有限公司

住所 上海市嘉定区兴邦路365号 MAP
電話 021-3351-7333

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