キーマンインタビュー
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索尼互動娯楽(上海)有限公司
総裁 添田 武人氏
バーチャルがローカルを創る
PlayStationがもたらす
中国エンターテインメント革命
2013年に中国大陸で解禁された家庭用ゲーム機ビジネス。ユーザーとの双方向のつながりを大切にコンソールゲームの魅力を発信し続ける同社に話を聞いた
満を持しての中国大陸進出
索尼互動娯楽(上海)有限公司は中国大陸全域におけるPlayStationシリーズならびにそのゲームソフトの開発、製造、販売を行うソニーグループの企業です。
日本でPlayStationのコンソールゲーム(家庭用ゲーム機)ビジネスがスタートしたのが1994年。中国大陸は2003年に進出しましたが、国の規制により1年ほどで撤退。その後2013年に上海で自由貿易区が誕生して初めて、中国大陸におけるコンソールゲームビジネスが解禁。その動きを受け2014年、地元企業の上海東方明珠文化発展と合弁で会社を作り事業を再スタートしました。
アジアでゲーム市場を俯瞰したときに、中国のマーケットサイズは日本をはるかに超えてアジア最大、今年にはアメリカを超えるとも言われています。そのようなマーケットに、すでに20年の歴史を持つPlayStationビジネス進出の足掛かりがない。その状況を打開すべく当社は創設されました。当社は中国大陸において、ゲームの楽しさを多くの人に味わってもらい、その世界を広げることをミッションとしています。10年の時を経て、今再びこの地で事業ができることをエキサイティングに感じています。
ゲームの空白を埋めるために
中国のゲーム市場の実態はPCでゲームをする人が7割。3割は携帯電話やその他ツールで楽しむ人たちです。日本やアメリカでは3、4割のシェアのコンソールゲームも中国での市場は1%にも達しません。原因は事業が長らく中国大陸に参入できずに大きなブランクが空いてしまったためです。我々が目指すのはそのシェアを少しでも上げること。ゲームの選択肢から長らく抜け落ちたその穴を埋めていくことです。
昨年3月末には中国大陸として初めてPlayStation4®、PlayStation Vita®を発売。ハードの販売は解禁されたものの、輸入ソフトの販売は依然として制限があります。日本では1年に100本以上のタイトルが発売されますが、中国大陸での昨年のlayStation4®タイトル販売実績はあわせて33本。ユーザーからの要望と国の制度の枠の中でどこまで事業を最大化できるかが今の課題です。
そういった困難を抱えながらも事業を行う意義は大いにあります。まずは故障などの問題にすぐ対応できること。現在販売しているハードには2年間の無料保証期間が付いています。そして現地で直接商品を届ける、サービスができる体制が整うと、今までほかで買うしかなかったユーザー達の利便性が高まります。最後に、当社とユーザーと双方向のやり取りでダイレクトに彼らの声を聞けることです。
新エンターテインメント体験の提供
PCや携帯電話にないコンソールゲームの楽しさは、画面に向かって大勢で一緒にプレイできる点です。個人がソーシャルメディアに向かう今の社会で、みんながダイレクトにつながる場を提供できることがコンソールゲームの価値であると思います。大きな画面で臨場感ある音声とともにスポーツやバトルを楽しむ、そういった中国の人々が今まで経験したことのない新しいエンターテインメント体験を提供できれば何より嬉しいことです。
当社が重要視するのは、ターゲット層である20代の若者とのコミュニケーションです。力を入れている微博のフォロワーも現在28万人にまで拡大しました。メーカーは売り切りではいけません。微博を通してユーザーから届く意見や質問にきちんと応えていくことで、文字通りインタラクティブ(双方向)な関係性を築いています。またイベントを定期的に仕掛け、実際の体験の場、みんなで集まる場を提供しています。そうしてソーシャルネットワーク上でも現実でもつながることで、「自分にはゲームを通して仲間がいる」というPlayStationワールドへの帰属感が生まれ、ユーザーはより楽しくなります。そしてそれは中国に進出した我々がやるべきことなのです。
会社設立2年目の目標は、中国のソニーグループの中でも最後発の当社事業の加速です。海外タイトルの導入に加え、今力をいれている活動は地場のゲーム開発会社とのコラボレーションです。その支援のため上海オフィスでは技術サポート機能を立ち上げ、技術セミナー開催から開発のオンサイト支援まで活動を展開。加えて、中国現地のクラウドファンディング・サイト「摩点網」と協同し、PlayStation向けインディーズゲーム支援も。我々の夢の一つはPlayStationというグローバルプラットフォームで中国発のゲームが大きくヒットする事業の創出。そして自社ビジネスという視点を超え中国ゲーム産業向上に寄与し、世界のPlayStation市場に並び立つまでに成長させること。それが究極のゴールです。
新たなゲームタイトルが出るたびに店を貸しきってユーザーにプレイを楽しんでもらいます。一緒に軽食をとりながらゲームのキャラクターの話で盛り上がったり攻略法を教えあったり。その輪は確実に広がっています
PROFILE
索尼互動娯楽(上海)有限公司
総裁
添田 武人氏
1967年生まれ、北京市出身。1990年北京大学文学部を卒業後、ソニー株式会社入社。東京、上海、北京での勤務でマーケティング、ブランディング、広報を担当。2002年より米・ソニーピクチャーズに赴任後、現地ケロッグビジネススクールでMBA
取得。2013年12月にSony Computer Entertainment(現Sony Interactive Entertainment
)に参加。2014年10月より現職。立ち上げより関わる。
添田さんを知るキーワード
アイデアの源泉
愛用のペンとノート。常に持ち歩き会議のメモやアイデアを書き留めています。手を動かすと記憶に残るし、メモを自由につないで新たなアイデアが生まれることもあります
常にファンとともに
ゲームユーザーと祝った中国進出1周年イベントでの1枚。北京、上海、成都、広州の各地で行いました。みんなでゲームの話をし、遊び、大いに盛り上がった2時間でした
中国でこそ活きる座右の銘
ナイキ創設者の言葉「チャレンジしなければ失敗したのか成功したのかすらわからない」。可能性と同時に課題も多い中国でこそこの言葉を常に問い直します
索尼互動娯楽(上海)有限公司
上海市黄浦区湖濱路222号企業天地一号8楼TEL: 021-6121-6161
www.playstation.com.cn
詳細は
索尼互動娯楽(上海)有限公司
住所 | 上海市黄浦区湖濱路222号企業天地一号8楼 |
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