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雇用関連条例の改定動向について(2)
今号では前号に引き続き父親向け育児休暇と、雇用関連条例に関する動向をご案内いたします。
父親向け育児休暇
2015年2月27日より父親向け育児休暇について規定した「14年改定雇用条例」が施行されました。これにより、雇用主は雇用条例で規定された条件を満たした男性社員に対し、条例に基づき3日間の休暇付与および休暇中は平均日給の5分の4を支給する必要があります。(条例の規定詳細は前号をあわせてご参照ください)
施行に際し、労工処はホームページで『法定育児休暇:FAQ集を掲載しています。
ご参考リンク: http://www.labour.gov.hk/eng/public/pdf/EAO2014FAQ.pdf
FAQ集では、
・育児休暇を取得するために、労働者はどのように使用者に通知する必要があるのか?
・労働者が規定された期限までに使用者に通知できなかった場合どうなるのか?
・子供の出生後に雇用される労働者は育児休暇を取得する権利があるのか?
・育児休暇手当の実際の算定方法は?
・使用者は育児休暇手当をいつ労働者に支給する必要があるのか?
等々、実務上の課題に対する回答や解釈が掲載されています。また、3月上旬に開催された労工処主催の説明会には多くの人事担当者が出席した模様で、説明会の質疑応答時間でも参加者から実務上の質問が多数出されるなど関心の高さが伺えます。労工処では、労働者が緊急で育児休暇を取得する必要がある場合や、すでに福利厚生として雇用条例の規定を上回るベネフィットを設定している企業等に対し、雇用条例の規定はあくまで労働者を雇用する際の最低基準を明文化したもので、実際の場面では柔軟に対応するよう提案しています。
最低賃金レートの引き上げ
11年5月1日に施行された最低賃金条例では最低賃金レートを2年ごとに見直すとしており、レート引き上げについて14年5月から各界の意見聴取や審議が展開されていました。現時点(※)では立法会での承認を待つだけとなっており、15年5月1日より最低賃金レートが時給30香港ドルから時給32.5香港ドルへ引き上げられる予定です。労工処ホームページでも条例の改定に関する公告が掲載されており、内容を確認することが可能です。
ご参考リンク: http://www.labour.gov.hk/eng/news/mwo.htm
(※)15年3月3日時点での情報です。
最低賃金レートの引き上げにともない、雇用条例で規定されている総労働時間の記録保存義務の条項も改定されます。本条項に基づき、算定期間において賃金が「特定の賃金」に満たない労働者の総労働時間を使用者は記録・保存する義務があります。この「特定の賃金」が、これまでの1万2300香港ドルから、1万3300香港ドルに改定されます。なお、記録保存義務の違反については、有罪となった場合1万香港ドルの罰金に処せられます。
このほか最近の動向としては差別条例の見直し・統一に関する審議や、MPF(強制退職積立金)にも留意が必要です。MPFについては、MPFA(MPF管理局)では毎月の強制積立対象収入金額の下限・上限を自動調整するスキームを検討しており、15年3月5日まで各界の意見聴取が実施されました。MPF条例では、下限・上限は4年ごとに少なくとも1回は見直す検討を行うと規定されており、管理局は制度の効率化等を考慮して自動調整のスキーム導入を検討している模様です。各種条例の改定動向が今後も注目されます。